第4話

「それじゃ、この間行った美術館の写真、見せるね」

 美咲の家にネイレや百合、真理をはじめ何人かのクラスメートが集まり、ゲームをしたりお菓子を食べたりしたあと、美咲がそう言って立ち上がった。

 最新の格闘ゲームでは美咲とタッグを組んで百合真理組を倒すなど、なかなか楽しい時間を過ごしたが、ここからは戦闘開始だ。美咲の言葉を合図にネイレは自分にそう言い聞かせた。

「おまたせ。はい、これ」

 そう言って、美咲はプリントアウトされたデジカメの写真を何枚か、テーブルの上に放った。

 写真は夜の美術館の前で美咲が立っているものが1枚、美術館の中の展示物を撮ったものが20枚ほどあった。写真の中の美咲は、泣きはらしたように赤い目をしていた。

「へー。こんなものが展示されてるんだ」

 真理が手にとった写真には、古代ローマの円形闘技場の様子を型どった銅製のレリーフが映っていた。先程の格闘ゲームといい、学級委員長は意外とバトルものがお好きらしい。

 他の子達も興味深げに見ている。

「叔父さんのおかげで、特別に招待してもらったんだっけ?」

 写真を手に取りながら、ネイレはさり気なく聞いた。

「うん。アライグマの侵入なんてなきゃ、今頃普通に入れてたのにね」

「ホントだよね〜、アライグマのやつが展示物に噛み付いたりしてなくてよかったよね」

 美咲の言葉に真理も頷く。

「ねえ、それよりさ、博物館に行く計画たてようよ」

 百合がそう言うと、美咲も身を乗り出してきた。

「私、博物館とかすごく好きなの。よかったらみんなに案内してほしいな」

 と、そう言ってから美咲はネイレのほうを向き直った。

「よかったら来てよ」

 その顔は、学区内で並ぶもののない美少女であるネイレでさえドキッとするほど、自信と輝きに溢れたものだった。

「それがいいよ。うん、そうしなよ」

 百合が真面目な顔で言うのが可笑しかったのか、真理や他の子達がクスクスと笑った。

  

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