第2話

 ネイレは小学生の頃から、その容姿と頭脳で注目を浴びていたし、ネイレ自身、自分が同級生達より注目される存在であることを理解していた。もちろん、だからといって女王様のように振る舞うつもりはなかった。仲良しの友達には優しく、それ以外の子にもそれなりに礼儀正しく。それがネイレだった。

 ネイレが小学5年生の時、クラスに転校生がやってきた。名前を美咲というその子は、ネイレのクラスに馴染もうと必死だった。努力のかいあってか、クラスの子達はみんな、その子を受け入れていた。

「ねえ、今度さ、美咲さん連れて一緒に博物館に行かない?あの子、興味あるみたいなんだ」

 そう言ってきたのは百合。ネイレの親友でクラスで一番背が低いが、クラスで一番運動神経抜群のスポーツ少女だ。

「うーん、私はいいかな?」

「どうして?」

「ちょっと用事があるんだ」

 さすがに、美咲のことが好きになれないから、とは言えない。スラリと背が高く色白でお嬢様タイプの美咲は、ネイレほどではないにしても、男女どちらからもモテるタイプだった。ただ勘のいいネイレは、美咲が時折自慢のために嘘をつく癖があることを見抜いていた。たとえば美咲は、自分の親戚にある有名スポーツ選手がいると言ったことがある。クラスメート達は美咲の名字とそのスポーツ選手の名字が同じであり、かつとても珍しいことから、その話を信じて羨ましがっていた。しかしネイレは、美咲の話す内容が全て雑誌や新聞に書かれたことばかりであることや、そのスポーツ選手の妹が同じ市内にいると知った時のギクリとした表情から、それが嘘なのではないかと思っていた。他にも、習い事や父親の職業、夏休みの旅行先など、ネイレには美咲が見栄を張って嘘をついていると思われる場面がいくつもあった。

 今はまだ証拠がないけど、いつか暴いてやるわ。ネイレはそう心に決めていた。

「なに真剣な顔してるのよ?」

「なんでもない」

 ネイレは肩をすくめた。百合はかなりのお人好しで、美咲にも普通に好感を抱いている。ネイレがそれとなく忠告したにもかかわらず、全く気づいていないのだ。やれやれ。もっともネイレとしても、はっきりとした確証がない以上、あまり強く言うことはできない。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る