二
たえの説明は次のようなものであった。
現在、草壁家の当主、
一方、国元の側室、おすみの方との間にも、ふたりの男の子がいる。
なお、この時代の正室と側室とは、現代における正妻と愛人ではない。第一夫人と第二夫人と言ってよい。
第一夫人(正室)の子に、言わば〈王位継承権〉が優先されるものの、第二夫人(側室)の子にも〈王位継承権〉はあるのである。
さてそんななか、今年七歳になる竹丸が、三月前から急に体を悪くして、寝こむようになった。それまでは、それこそ風邪ひとつひかない丈夫な子であったのに、である。
病の原因はわからなかった。お抱え医師の
病の原因がわからないまま、竹丸は日に日に衰えていく。いまは、お抱え医師の宣宅が、気休めかもしれないが、と投薬を続けている。
そのうちに、これは国元の側室、おすみの方が、わが子に家を継がせるために、あやかしの一味をやとって、竹丸に害をなしているのではないか、という話になった。
おすみの方のお付きの者が、得体の知れない者に金を渡して仕事を頼んだらしい、ということが、国元のほうから伝えられたのである。
試みに名のある僧に見てもらうと、なにか怪しげな気配がある、とは言うものの、はっきりとはしない。
そんなとき、江戸の闇の世界に、あやかしを退治する凄腕の浪人がいる、という話が、しかるべき僧を通じてもたらされた。
竹丸の母、お美代の方と、乳母、たえは、一も二もなくこの話にとびつき、本日こうして、あやかし退治をなりわいとする土門鬼一郎と、娘のときが呼ばれたのだった。
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