第9話 痛み分け

セイを部屋まで運ぶフリート


一体どういうことなんだ、何が起きている?信じられない。


セイの経歴書には解毒は使えない、会得していないとあった。

だが実際、草爺を完全にではないが、回復させた。

そして今セイは草爺と同じ症状だ。

セイは草爺を回復させたのか。それとも、


経歴書には報告書もついていた、前の主は賊に襲われ首元を切られ負傷。

目撃者も多数、だが、主に怪我は見つからなかった。


セイが来た日、確か、セイの首元に包帯を巻いているのが見えた。

まさかとは思っていたが、セイは低級より上の回復技も使えるのか。


幾多の仮説がフリート脳裏を巡っていく。そして思い当たった。



──痛み分けか──



痛み分けは中級の回復師が使う技だ。

怪我人が重篤な場合、一つのダメージを分散させて、命の危険を減らす。

上級回復師や大勢の回復師がいない場合使われる。限定的な技だ。

負傷箇所の分割、いや、あらゆるダメージを分割、分散させることができる。


だが、納得がいかない。


痛み分けは普通、分散したダメージの移動先はあくまでも怪我人の中だけだ。

体の外にダメージを分けることはできない。

つまり他者にダメージを分割することはできない。

痛みを受け取ることすら、聞いたことがない。


セイは草爺のダメージを、毒をと言う形で受け取ったのか。


だとすれば、どれだけの毒を受け取ったのか……




今はとにかくセイの看病だ。ヴァン達が帰るまでなんとか持ちこたえさせる。


セイをベッドの上に横たわらせるフリート。震えるセイの手を握りしめる。

「絶対に死なせはしないっ……」

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