第7話 食堂で
昼を回った頃、給仕の仕事がひと段落した。セイは食堂で昼食を取る。
「よ、セイ、今日はおつかれ」
フリートが食膳を持ってセイの向かいの席に座る。
「フリートさんおつかれ様です」
「給仕の仕事大変じゃなかったか。意外と力仕事が多くて」
「いえ、そこまででもないです、ミーナさんや給仕係の人とみんなでやってますから、それこそフリートさん、今日は来客の案内だったんじゃないですか」
食事の手が止まるフリート。
「おっ、セイ見てたのか?モリテ探しの客と寮内を一周させられた。ウチのモリテの実際の顔が見たいんだとよ。どうせ使い捨てとしか思ってないだろうに」
大きな口で昼食のカレーをつっこむフリート。
珍しいなぁと思った。フリートさんが誰かをわるく言うことは滅多にない。そしてイライラしている。
周りには見えなくても、体の奥底には強い怒りがあるように思った。
「まぁ、それも午前中で終わった。
今日一日は見て回るつもりだったらしいが、ツレのやつが、こんなむさ苦しいとこ入りたくないっつって外で待ってんだとよ──」
ツレの人。
私が屋上で聞いた歌。
歌っていたのはその人だろうか
「そのおかげで前倒しに案内が終わってよかったけどな、もう肩が凝ったぜ。お偉いさんは気を使う」
ちょうどいい口実ができたと思った。
「フリートさん、夕方稽古しませんか。わたしでよければ」
「おお。いいね、セイから誘われるってことは本気でやってくれるんだなぁ。
そうとくりゃ、午後の書類整理、さっさと終わらせるか」
フリートさんの声が弾んでいる。
私も楽しみだ。
食堂の奥が騒がしい。
1箇所のテーブルを取り囲んで、人だかりができている。
どうしたんだろう。
「セイっ! 来てくれっ!」
呼ばれた方へ走る。背筋に嫌な寒気を感じた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます