第4話 パトリアの仲間

「今日からうちの寮の仲間になるセイだ。女性だが、剣技にたけている、腕の立つモリテだ。

仲良くしろよ。困らせたら俺の鉄拳制裁を覚悟する様に」


「えーっ」

「そんなんじゃ仲良くなれねぇよ」

「どうせ女だろ(強さなんて)たかが知れてる」

モリテの男たちが話している。何か決めているようだ。


「なあ、剣の相手してくれよ」

「俺も! 俺が教えてやるよーこっちこっちー」

セイの腕引く男たち。


「あのフリートさん……」


「俺も少ししたら行く。セイっ、そいつらやっちまっていいからな」

フリートがにやけた顔をする。





何やら稽古場が騒がしい。歓声も聞こえる。

「あいつら何やってんだか」


フリートが稽古場に着くとセイとヴァンの姿が。

「なんでヴァンがセイと試合してるんだ?」


「あっ、隊長遅かったですね。いや〜、思いの外あの新入り強くてですね。すぐ試合終わっちゃったんですよ。

そしたらうちのモリ屋の意地を見せてやるってヴァンが──」


全くたるんでるぞ、モリテの意地はどうした。


だが、個人的にヴァンとセイの強さは気になる。

この寮の中で2番目に強いのはヴァンだ。


セイとヴァンの試合に沸く稽古場。

「ほう、さすがだなぁ。あのヴァンが押されてる」

なんならセイは楽しそうだ。素速い流れるような剣撃。


セイはヴァンの木刀を払い返した。剣先がヴァンの額をかすめる。

いや少し切れた。ヴァンの頭から一筋血が流れる。


カランと木刀がセイの手から離れ落ちた。

「あっ、すみませんっ」


セイがすっとヴァンの頭に手をかざす。

傷が塞がっていく。


「なんだ」


額に手を当てて確かめるヴァン。


「(傷が)ない。痛くねぇ。おまえが直してくれたのか」


申し訳なさそうに頷くセイ。

「すげぇな。あんがとな。……なぁ、おまえ回復師なのか?」


「え、あ。何って言ったらいいか。

──低級の回復師です──」


戸惑った表情をするヴァン、でもそれは一瞬で、


「そうかっ。回復師かっ! すっげぇよ!

ってか俺に張り合うなんてオマエすげぇよ!」


キョトンとしているセイ。


「俺はヴァン、おまえ、俺ともう一回勝負しようぜ」


セイが困った顔をする。フリートが稽古場の上に上がって来た。


「全く、おまえおまえってさっき紹介したろう。

セ・イ・だ。名前ぐらい覚えろ」 


フリートがセイの前に来た。


「はぁー……

気にすると思って(回復師の)力のことは周りには言わなかったんだけどな」


そう言い、手を差し出すフリート。

「セイがこの道を選ぶなら、俺は背中を押してやる」


フリートの手を取るセイ


「──父のような大きい手だ──」



「今日からセイはモリ屋パトリアの仲間だ!」



「うおぉっー! フリートが宣言したぞ!」


「ってことは宴会だぁっ!」

「酒だ、酒盛りだっ!」

「飲むぞぉ!」

「歓迎会もなっ」

突然盛り上がるモリテたち。


「え、え?」

何が起きたかわからない様子のセイ。そこへヴァンが来る。

「認められたんだよ正式に。パトリアの仲間として。

パトリアのモリテは家族みたいなもんさ」


セイの目にはパトリアの仲間たちが写る。


宴会の支度で盛り上がるパトリアのモリテたち。

夜までセイの歓迎会は続いた。

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