第3話 セイの経歴
「生きる目的か」
セイがモリテに来た時のことを思い出すフリート。
会長室に呼び出されたフリート。
「来週からうちのモリ屋に入って来るセイだ。今日は顔見せで来てもらった」
若いな、女性か。腕や手の傷、おそらく現役のモリテだろう。
「俺は
セイという女性は軽くお辞儀をする。
「まだ怪我が治ってないようだから、入隊は来週からになる。差し当たってセイは──」
怪我か、彼女の首元からうっすら包帯が見えた。俺のなかに不安がよぎる。
顔合わせが終わり、彼女はかえって行った。
会長と2人きりになるフリート
「訳ありだが、いい力持ってるみたいだし、フリート、セイの面倒を見てくれ」
「俺がですか、セイって女性じゃないですか。誰か女のモリテに頼んでくださいよ」
「まぁ。とにかくオマエにしか頼めないんだ。細かいことはこの経歴書見てくれ」
言われるままにもらった経歴書を手に取る。
ロワール-セイ
現在18才。エーカー街で生まれ育つ。
父は王家のモリテ──国王やその家族親族を守る特別なモリテか。
母は王都街で薬屋を営む上級回復師。
数ヶ月前、セイの父親は国王への反逆の疑いで投獄。
母親も連行、道中に逃亡し行方不明。
心体的ショックゆえか両親に対する記憶障害あり。
王城に回復師として引き取られたが、レベルの低いまま能力が上がらず退城。
父親ゆずりの剣術には定評あり。今まで別のモリ屋に所属。
だが最近雇い主が襲撃され、負傷。雇い主に命に別条はなく、傷もなかったが、周りの目撃者達によって告発……
モリテとして非難され退所。
今に至る。
「なんだこりゃ、こいつはどこまで王家に目をつけられているんだ。大体この雇い主って王家の親戚だろ」
だいたいの想像がついた。はめられたのだ。王家のものとならない彼女の評価を下げ、傷をつけた。モリテとしての価値も下がる。
それにモリテとして主を守れず追い出されるのは屈辱だ。次の主を得るのは容易ではないだろう。
「だからこんなに離れた辺境のモリ屋まできたのか。いや、飛ばされてきたのか。
モリテを辞めることもできただろうに」
経歴書の下欄を見る。
備考、解毒できない回復師。
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