第2話 回復師のセイ

稽古場で訓練中のフリートとヴァン。


「イテッ、おいフリート手加減しろよ。ケガすんだろ」


「この程度で根を上げるのかヴァン」


「オマエは体力バカかよ、もう1時間打ちあってんだぞ。そりゃ手に限界きてもおかしくないだろ。イテテ、」


フリートの後ろにセイの姿が見えた。

「あっ、セイ助けてくれよ、フリートがさぁ」


「おいコラ逃げんのか」


「へっ、逃げてるんじゃねぇ、休憩だ」


「全くヴァンの奴」


「わりぃ、セイ、フリートのヤツ思いっきりやりやがってよぉ。

ちょ切っちまった。頼む、セイの力でちょちょいと」


「おい、そんな簡単にゆうもんじゃ──」


「いいんです、これくらいしかできませんから」

そう言ってセイはヴァンの腕に手をかざす。ヴァンの腕の切り傷や擦り傷が治っていく。


「おー、さすが回復師だなぁ」


ヴァンからの言葉にセイの顔が曇る。フリートがヴァンを睨んだ。


「いえ、名乗れるほどではないんです。なにせ低レベルの回復しかできませんから、私なんか──」



嫌な記憶を思い出すセイ。

「アンタは捨てられたのよ。アンタを置いて逃げてった」


もう、どうでもいいことだ。モリテとして逝けたら。



「セイー、こっちにも来てくれー」


「はーい。じゃあ、行きますね。ヴァンさんが無事でよかったです」


「おう!ありがとな!」

セイは呼ばれた方へ走っていった。




「ったくバカ!」

フリートがヴァンを殴る。


「痛っ、何すんだよ。せっかくセイに直してもらったのに」


「バカに治療は必要ない」


「はぁ?」


「本当に治療が必要なのはセイなんだからな」


「あー。あぁ」

頭を掻くヴァン。

「あいつには生きる目的ってやつを知って欲しいんだ。今は回復師として必要とされるだけでも、セイにとっては生きる目的になるんだろうからさ」



「生きる目的か」

フリートはそうつぶやきながら、セイが来た日の事を思い出していた。

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