第三章 バッドエンドを二人で染め上げて。
第19話 後輩襲来
俺と宇佐美が付き合って3ヶ月が経ち、俺達は大学二年生になった。ちなみに悲しい事に、それからの進展は一切無く……
「というか、どうすれば良いんだよ!?」
「取り敢えず学、落ち着こうか?」
「でも、普通の女の子とも付き合った事ないのに、男の娘となんて……」
「力になりたいけど、そればっかりは分からないなぁ。俺はノーマルだしな…」
「いや待て、純恭!?今、俺がノーマルじゃないみたいに言ったよね!?俺は宇佐美が好きなだけで、ノーマルだから!」
「分かった分かった、分かったから落ち着け」
実家から帰った宇佐美と俺は純恭に俺達が付き合った事を報告して、純恭はめちゃくちゃ祝福してくれた。本当に良い友人を持った。
…んで、今の俺の悩みは彼女(宇佐美)とどう付き合っていくかだ。
宇佐美は見た目も声も女の子な男の娘(男子)…ぶっちゃけ普通の女の子との交際経験が少ない俺からしたらハードルが高過ぎる。
大城とは付き合ってたけど、初デートで振られて、あれは付き合ったというのか?
それは置いといて、宇佐美の事は大好きだけど…『男』っていう概念が邪魔をする。好きだから付き合ったんだけど…やっぱノーマルの俺が拒否反応を示してしまう。
一緒にいるだけ幸せなんだけど、やっぱそれだけじゃダメなんだよな?
「どうすれば良いんだ…」
「さ、酒の勢いとか?」
「いや、一番ダメだろ!?てかまず、スッ飛ばしちゃダメだろ!?後、生々しいのは辞めて!?」
絶対、次の日後悔するやつだし!──ちなみに今は純恭に相談…というか、俺が一方的に話している。
「そうだ、学に頼みがあるんだが」
「えっ?俺に…いや、別に内容次第だけど…」
俺に頼み?…純恭からってのは珍しいな。まぁ、宇佐美と鶴野さんの件では世話になったから、俺に出来る事なら力になりたい。
「冬の阿賀フェスの時、親戚の子の世話を頼まれてたって言ったろ?」
「言ってたな、面倒見てるって…」
「彼奴、お前とこのサークル入るらしいから仲良くしてやってくれ」
「えっ!?この大学の奴なの!?」
「あぁ、最近入学して心細いだろうから、もし良ければ友達にでもなってやってくれよ」
「ちなみに名前は?」
「
「いや!金髪は割といると思うんだけど!?」
取り敢えず俺は純恭からの話を後で宇佐美にも話す事にした。
「えっ?後輩!?仲良くしたい!」
すると、宇佐美はめちゃくちゃ乗り気だった…というか、元からこういう奴だったわ。うちの彼女…彼氏が正解なのか?まぁ、それは置いておこう。
そんで入って来た三人の後輩の中にその子は居た。何となく不思議な雰囲気を醸し出す金髪ショートで首にヘッドホン掛けている。
そして前の二人が挨拶をして最上の番がやってくる。「最上雅です…」挨拶はそれだけだった。
そこで女子の先輩が「最上ちゃん、他に何か無い?好きな食べ物とか?」
それに対しては「教える必要ありますか?」っと言い出し、見かねた大城が「好きなゲームとかあるの?」とフォローを入れると最上は好きなゲームの話を饒舌に話し始めて──大城からの優しい静止が掛かるまで5分近く話し続けて、周りの先輩達と他の後輩二人は若干引き気味だった。
こりゃとんでもないのが入って来た…と考える俺と反対に、相変わらず宇佐美は後輩が出来る事に対してウキウキしていた。
ちなみに鬼堂先輩だけは何故か涙目で最上の話を聞いていた。あれ?そういや去年4年だったよな?何で鬼堂先輩いるんだ?
「雅ちゃん!エタニティテイルズ好きなの!?」
純恭からの頼みもあり最上に話かけようとしたが、宇佐美に先を越されてしまった。
「はい、えっと…誰ですか?」
「自己紹介忘れてた!僕は宇佐美ココ、よろしくね!」
「そうですか、だから何ですか?」
最上の返答は何だか冷たいもので…後、宇佐美も大概変な奴だが最上も変わった奴だとは思った。
「僕もエタニティテイルズやっててね!良かったら一緒に今度、やろうよ!」
ちなみにエタニティテイルズとはFPSとRPGを融合した最近人気のサバイバルゲームだ。俺もネットニュースの記事で良く情報だけは閲覧している。
「まぁ別に良いですけど、足引っ張らないで下さいっす」
やっぱ何か言葉に棘があるんだよなぁ…
「大丈夫!自分で言うのも何だけど僕は結構上手いから!」
そういや、最近やたらエタニティテイルズをやってたなぁ…実際、宇佐美はゲーム何やらせても上手いんだよなぁ。
「江夏もエタニティテイルズやらない?面白いよ!」
せっかくの宇佐美の誘いではあるが…
「悪いけど、俺はFPSは苦手なんだよ。クソAIMだし……」
俺は基本的にFPSはやらない。それはAIMが苦手なのが一番の理由だ。
すると「そうですね、やらない方が良いですよ」と最上が言い放つ、まぁそうなんだけど言われてみると癪だな。と思っていたら、男子の後輩が宇佐美に話かけてくる。
「他の先輩から聞いたんですが、宇佐美先輩って男の人なんですか?」
「ん?まぁ、そうだよ?僕は男だね!」
すると隣に居た後輩女子も話かけて来て、宇佐美の周りには後輩達が集まって来ていた。そんな時だった──
「つまり、ホモなんすか?」
最上の言葉にその場が凍り付いた。さっきまで酒を飲みながらゲーム談義をして笑っていた先輩達も話を止めてしまう程で……
実際、サークル内では皆んな宇佐美に対しては性別の話をするのを何となくだが避けていた。
まぁ勿論、宇佐美が自分で男と言っているので気にしない先輩もいるのでさっきの後輩の質問には何の問題もなかった。しかし、最上は一番デリケートな問題に土足で踏み込んだ。
「ん〜、あんまりそういうのは考えた事はないかなぁ?」と宇佐美が笑って言った為、丸くは収まったが…実際、空気は暫く悪かったりした。
その間も最上は自分が何を言ってしまったか気付いてないようだった。
そんな事もあってか、サークル内で最上と接して来れるのは宇佐美か大城か鬼堂先輩くらいになっていた。
なるほど、純恭が気にかけていたのも良く分かる。こんな事では何処に行っても孤立してしまう。
何となくだが、この子に悪意は無いのは良く分かるが…皆が皆んな理解出来る訳じゃないしな。
結局、歓迎会が終わるまで最上は空気が読めない発言や突拍子のない発言をしていたが、もう周りがそれに対して反応する事は無かった。
帰り最上に対して俺は声を掛ける事にした。別に叱る為じゃなくて、純恭にお願いされた事もあってだ。
実際、歓迎会中は宇佐美とばかり話していたしな。
「最上、帰りは一人なのか?」
「はぁ、えっと…」
「あぁ俺は江夏学って…ん?紹介しなかったっけ?」
確か歓迎会中に自己紹介した筈だが…どうやら覚えられて無かったらしい。
「それで先輩は何か用ですか?」
「いや、歓迎会中あんま話せなかったからさ。少し話そうかなと」
「自分は別に興味無いんですが…早く帰ってゲームしたいですし」
「まぁまぁ、そう言わずに…」
興味無いとか言われると傷付くなぁ…まぁ、仕方ないか……
「最上、俺は純恭にお前の事よろしくって頼まれてさ。だから出来れば仲良くしたいと思ってる」
「純兄から?あの人、お節介なんですよ。無理しなくて良いですよ、私は一人でも平気なんで」
「無理とかじゃなくてさ。最上が同じサークルの後輩だから心配ってのもあるんだよ」
「今日初対面ですよね?別にどうでも良くないっスか?」
結構、ドライだなぁ…まぁ、それならそれで良いんだけど……
「まぁ、俺の事が嫌いなら嫌いで良いんだけど…純恭からの話を俺から聞いて、宇佐美は本当にお前と会うの楽しみにしてたから仲良くしてやってくれ」
「宇佐美先輩とは…まぁ、良いんじゃないですか?それより先輩に何かおかしな態度取りました?」
ん?おかしな態度かは置いといて割と言葉のナイフは突き立てられたが……
「どうしてだ?」
「私は別に先輩の事を嫌いとは言ってませんけど、もしかして歓迎会でも私何か言ってました?」
もしかして本人なりに気にしてたりするのか?やっぱり悪い子じゃないんだろうな。
「まぁ、言ってた様な?でも皆んな優しいから気にしてないって!」
すると慌ててフォローする俺の所に静寂を切り裂く奴が……
「江夏ぅぅぅぅ!」
そう言って俺に飛び付いてくる。俺は寄ろけて少し情けない声を出す。
「先に行くんなら声掛けろよな!あっ雅ちゃん!家の方角一緒なら帰ろ帰ろ!あっ、焼肉行っちゃう!?勿論、江夏の金で!」
「何でだよっ!」
割とグイグイ来る奴だが、後輩が出来た喜びで更にグイグイLvが上がってやがる。
「分かりました、先輩のお金なら」
「良し決まり!今日は江夏の奢りで焼肉だぁ!」
「現金な後輩を持ったなぁ…」
「現金を払うのは江夏だけどね!」
「やかましいわ!」
それに対して最上が少し笑っていた気がした。楽しそうにしてくれてるなら良かった。
後、三人で焼肉屋に行って分かったのは最上は良く食べるという事、食いしん坊の宇佐美に負けない程の肉を食べていた。
「今日はありがとうございました。私、家はこっちなんで」と最上が自身の家の方向に歩いて行った。
最近、暗くなるが早いから送ろうと思ったが断られた。
「良い子だね!雅ちゃん!」
「まぁ、そうだね…」
多分、誤解を招き易いんだろう。もしかしたら、その事で辛い思いをしてきたたりしたのだろうか。
俺は宇佐美と帰りながら、そんな事を考えていた。
『新たな出会い、新たな物語』
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