第38話 裏の告白・前
「さあ、説明してもらうぞ」
「はい、もちろんです。まず確認してもらいたいのですが、私はあなたのことを伴侶にする目的でやって来たのはいいですね?」
「まあ、それは会った当初から言っていたな」
出会い頭に言われたことだな。
「そしてやってほしいことに超能力を鍛えることと言いましたね? その方法も」
「うん。なんかピンチになるとか、強い感情で超能力使うと鍛えられるんだよな?」
「はい。なので倉橋病院の件は知ってても黙ってました」
「ああ、そうだったな」
「でも、実はそれだけじゃないんです」
「あん?」
「病院の件や今回の件など、黒幕は私です」
恵空から信じがたいことを言われる。
「……ん? え? ……なにやったの?」
「いいでしょう! 時系列でわかりやすく教えてさしあげましょう」
嬉しそうな顔が腹立つな。
「すこ~しむかし、とある清く優しい宇宙人は伴侶にしたいと思う男性を見つけました」
「なんで昔話風に話すんだよ」
「宇宙人は男性の身辺調査をしました。不要な存在を抹殺するためです」
「初手が物騒過ぎない?」
いやでも昔話って結構残酷なの多いか?
「都合がいいことに目的の男性の隣の部屋に危険な存在が潜んでいました」
「マジかよ。てかやっぱ隣の住人無理矢理追い出したんじゃないか?」
「無理矢理追い出してません。ムラムラの技術を用いて記憶を奪い、容姿をそっくりに作ったロボットと入れ替えたのです」
「思ってたより物騒だった。隣の住人がなにが危険だったんだよ?」
「彼女は地球防衛軍の一員でした。この名前から勘違いしないように言っておきますが、活動内容は全宇宙人の排斥運動ですからね? ちなみにここのトップがニョタイモさんです」
「少し聞いただけでお互いが不倶戴天の敵だとわかるな」
しかしそんな過激な組織のトップなのに女体盛りをもじった名前でいいのか?
「はい。そして入れ替えた彼女は買い物代行ロボです」
「ああ。そういう繋がりなのね」
「彼女から色々な情報を得て、どうせ潰す組織なので利用しようと宇宙人は考えました」
「そこまではわかる」
「彼女の知識から厄介な人物をピックアップして次々とロボに入れ替えました。そうして地球防衛軍を密かに牛耳っていきました」
「よくばれなかったな。テレパシーで感情読めるやつとかいなかったの?」
「それは超高等技術ですし、心を読む超能力者は最初に狙いましたので。そして倉橋病院の院長に娘さんを生き返らせる方法を教えます。まあ、降霊術ですね」
「へー。……黒幕ってそういうことか」
あの病院でも騒ぎはよみがえった院長の娘が起こした。恵空がその原因なら黒幕と言えるか。
「はい。幽霊が暴走するのはわかってましたから、あなたがそれを解決すれば超能力が鍛えられるかなと思いまして」
「それ、シェル先生が危険だったんじゃ?」
「はい、ですからあのとき危険なら助けられるようにロボットが待機してましたよ」
危険なのを放っておいたわけじゃないのか。
「……フォロー準備しとけば、なにしてもいいわけじゃないからな?」
「え? まあ、次から気をつけます。それで、予想したとおりに幽霊が暴走しました」
「それを俺が対処したと」
「ですが、対処の仕方が想定外でした。まさか、生き埋めみたいにするとは」
「どんな予定だったんだよ?」
俺としては至極まっとうな方法なんだが。なにすると思ってたんだ?
「普通に乗り込んで行って皆殺しです。向こうの攻撃は効かず、こちらの攻撃はよく効くので当然です」
無策で突っ込むと思われてたの? まあ、あのときは忍者服に対する信頼がいまいちなかったから突入しなかった。だが信頼してたら突入してたかもしれない。
「まあ、安全策を思いついたから仕方ないよね」
「結果的に超能力は鍛えられたのでいいんですが。そして都合がいいことに戦力の補充にもなりました。あなたが水没?させた者どもを使って作ったのが、幽霊がいっぱいくっついて一つになったようなやつです」
羽化二日目の集合体幽霊のことか。
「あれがそうなの? なんかあんないっぱいいたの?」
「いいえ。ぬらりひょんが混じっていたことからわかると思いますが、羽化までどんどん数を追加しておきました。幸いにもあなたが実験材料に使っても怒らない範囲の人間が多くいたので」
「めっちゃいたな」
あの集合体幽霊、ちょっとした山くらいあった気がするけど。
「あと見ても気づかなかったみたいなので教えますが、倉橋の娘は縦ロールです」
「え!?」
まさか縦ロールも殺っちまったの?
「正確には縦ロールの元になったのが倉橋の娘です」
「よりわかんなくなったな」
元とは?
「あなたが縦ロールと呼んでる者は倉橋の娘のクローンです。しかし院長はそれでは満足できなかったみたいですね。簡単に降霊術に乗ってきました」
「そうなのか。俺が水没?させたのは縦ロールではないんだな? 生きてるのか?」
「はい。生かす代わりに相続する財産の一部をもらい受ける約束でかくまいました」
「ん? 狙われてたの? 誰に?」
「父親からですね。本物の娘が戻って来たので、もうクローンは必要ないと思い殺そうとしたみたいです」
「おいおい。恐ろしいほどのクズだな。……あれ? 恵空が降霊術とか教えなきゃそんなことになってないよな? なんかマッチポンプくさくない?」
「いえいえ。火をつけたのは院長ですから少し違いますよ。いやー、まさか縦ロールを殺そうとするとは。計算外でした」
にこにこの笑顔で恵空が言う。
「心読めなくてもわかる。絶対嘘だわ」
「あ、言うの忘れてました。実はターボ婆さんや児啼爺と連絡先交換しました」
「どうでもいい情報。てかあいつらスマホとか持ってんの?」
「妖怪用のものですが、持ってますよ。そして、チワワにあなたを襲うように誘導するよう指示しました」
「どうでもよくなかった」
超怖い思いさせられてた。
「そしてお待ちかねの肉体改造タイムです!」
なぜか恵空がご機嫌になる。
「そっからテレパシー使えるようになったんだよな。しかし恵空の外見の好みは意外だった」
まさかゴリゴリのマッチョ形態が好きとは。
「あ、あなたを私好みの外見にするために肉体改造したと思ってるみたいですが、それ勘違いですよ」
「え!? 俺のマッチョ形態イケメンと思わないの!?」
「いえ、思いますが主目的ではありません。いい感じに勘違いしてくれていたので黙ってただけです」
「……じゃあ、なんだよ?」
恵空がにんまりと邪悪に笑う。
「気づかれなくてよかったです。まあ、気づいたところで遅いんですが。答えは寿命です。私と末永く過ごせるように、あなたの寿命を延ばしました」
「おおおおおおおおおおおい! え!? どんくらい延びたの?」
とんでもない秘密! なんてこと無断でしてくれてんだよ! いや確かに長生きはしたいけれども!
「そうですね……あなたの好きなアニメの状況が実際に起こるか確かめられるときには老化もしていませんね」
「どういう意味?」
「電脳世界になってるか、とかですよ。白いピッチリスーツが見れるかも!?」
あと四百年くらいは若いの?
「長生きだな、おい! あれ? 俺もう一般社会で生きていけない感じ?」
そうだよな? 周辺の人間しわしわになるのに俺だけ変わんないんだから。
「超能力者や宇宙人などの存在を知っている人達の世界なら生きていけますから大丈夫です」
「大丈夫じゃないよ!?」
それ全然フォローになってないから。
「そもそも命狙われたからって殺しにいく精神の持ち主が一般社会で生きていけると思いませんが」
「今まで生きてきたじゃないか」
信頼と実績の十八年間だぞ? 四捨五入で二十年。さらに四捨五入で……零! 成程。これが過ぎたるは猶及ばざるが如しってやつか。
「いえ、今まではそうですけど、これからはどうせ無理だと思います。聞きますが、もし上司が帰り間際仕事押し付けてきたらどうします?」
なかなかにムカつくな。まあ、それくらいなら軽い報復ですますな。
「そうだな、取りあえずそいつが階段降りるときがあったら一瞬だけ軽くして解除するかな。車に乗っての通勤なら通勤経路調べて、横風強いときとかに軽くして解除する」
「ほら絶対むいてませんって。普通は我慢しますよ」
「いやいや超能力もってたら皆やるって」
「やるとしてももっと被害を抑えますよ」
「おいおい、誤解しないでくれよ。仕掛けるのは行きじゃない。帰りだ」
俺はそんなに自己中じゃないぜ。他人の迷惑くらい考える。
「それのどこに違いが?」
「わかってないなー。行きなら現場を通勤路に使ってる皆様が会社に遅れたりして迷惑するじゃないか。一方帰りはそんな急ぐことないだろう?」
「まあ、そうですけど。……いえ、容体が急変した大事な人のもとに急ぐ場合は可哀想では?」
「……確かに。改めて考えると超能力ってあんま使えないな」
「まあ、現代社会ではそうですね。なので使える業界で生きましょう」
「そこに戻ってくるのか」
「まあまあ、生活費程度の金なら簡単に用意できますから」
「あれ? もしかして俺養われそうになってる?」
ヒモ街道一直線に突っ走ってる?
「いいえ? ロボは私が直せるので維持費はただにできますし、保険とか医療費とかもいりません。なので生活費は食費だけ稼いでもらえたらそれでいいことになるので」
そうだよな。自分で生活できるんならヒモじゃないよな。
「それなら簡単だな。じゃあ、寿命を延ばしたことはいいや。それで、次は……産女は、最初から恵空の仕業だってわかってたしな」
というより産女の事件はすでに騙されて被害受けている。
「はい。あと私が仕組んだのは最後の戦いだけですね」
「なにやったの?」
「あなたや私を積極的に始末しようとする派閥を洗い出して攻めてくるようにしました」
「なんでだよ。それがわかってんなら別の派閥のやつにそいつら始末させた方が楽じゃん。……あ、俺の超能力を鍛えるため?」
「いいえ。これについては最後に説明します」
「わかった。最後はニョタイモ・リーだよな部下がロボットに入れ替えられていた」
なんか登場したらすでに死の一歩手前だったんだよな。
「はい、それについてはもう話ていますね」
「ああ。ん? これで終わりか?」
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