第35話 二日目

 宇宙船が全て墜落した。残りはヘリとか戦車だ。しかしヘリなどは墜落に巻き込まれたり、墜落によりおこった衝撃で操縦できなくなったのか壊滅していた。戦車などは生き残りは数えるほどだ。軽くして空中にぶん投げて終了だ。


 駆除が終わった。


スカートめくりに思いをはせていると、あっという間に夜になった。最初の敵を早くに片付けることができたので、少し仮眠がとれた。これもしかしたら長時間起きてられるやばい物をキメなくてすむかもしれない。


そんな風に期待を胸に抱いていた深夜。丑三つ時に邪魔者が現れた。


青白い人魂みたいなものが無数に見える。鬼火っていうんだっけ? 鬼火が妖怪たちを照らしだす。よく見ると河童や鬼、唐傘お化け、牛鬼など一目でわかるものもいるが大半はよくわからない。まさに百鬼夜行って感じだ。


一応確認のため、なんのために来たのか聞いてみる。


「こんにちは。いいお天気ですね。今日は皆さんどうされました? お花見ですか?」


 なんかさっき天気は見ればわかるとか言った気がするが、妖怪相手にエロの話題をどうやってふればいいのかわからないので、天気の話題になってしまった。いや、だって人と姿が違い過ぎるからなんて声かけていいのかわからない。『よっ! そこの河童さん巨皿ですね。胡瓜オマケしときますね』『唐傘さん、ぴっちぴちで羨ましい。肌が水、超弾いてるー』『カラス天狗さん、羽毛がつやつやでふさふさですね。育毛剤なに使ってます?』とかか? ……初対面でこれはないな。うん。やっぱ天気で正解だわ。天気の話題最高。


「深夜にいいお天気ってなんだよ!? あと十二月にお花見はできないだろう!!」


 返答があった。だれが答えたのか探すと、声の主は三つ目のカラス天狗のような妖怪だった。


「いや、いっぱいなんか花咲いてるじゃん」


 恵空に連れてこられたここは花が結構咲いてる。小さく白い花がうなだれてる感じだが。


「普通は木になる花見るんだよ! 地面に咲く花を見るのは花見じゃなくて散歩だ!」


 なんて酷い言葉だ! 花差別だ。


「人間、上ばっか見てると疲れますよ。たまには足元を見て自分が普段踏みにじっているものに目を向けてはどうですか?」


「それの台詞を! ぬらりひょんのことを殺した、人間のお前が、妖怪である私達に、言うな!!」


「ちょっと殺したなんて人聞きの悪いこと言わないでくださいよ。ぬらりひょんなんて知りませんよ。どうしてそんな勘違いに至ったのですか? こちらがぬらりひょんのことを殺害したように思う根拠はなんですか?」


「ぬらりひょんはお前達に会いに行っていなくなった。お前達以外考えられん」


「えー。短絡的過ぎるでしょう。そんなんで大勢で押しかけたんですか?」


「……では人魚の肉を返してもらおう。そうすればこの場は収めよう」


 なにそれ? わけわかんないこと言いだしたぞ。そんなの知らないんだけど?


「は? なにそれ? そんなん知らないんだけど?」


「……やはり嘘か! 皆! かかれー!!」


 三つ目のカラス天狗みたいなやつの合図と同時に妖怪どもが動きだす。なんか勘違いされてない? ぬらりひょんのことは確かに嘘だが、人魚ってなに?


 まあ、妖怪どもが攻めてきたときの対応も恵空から聞いている。


 拠点の一部に、巨大なスイッチのついた部屋がある。そのスイッチをロケットパンチで押す。恵空から聞いていた味方の戦力がその部屋から出てくると聞いている。


「おらあ! お前らの相手はこいつじゃあ、妖怪ども!」


「「「…………」」」


「…………」


 部屋から出てきたのは幽霊の集合体のようなものだった。数多の人間の幽霊を固めてつくったような化け物だ。上半身だけだが数えきれないほどの数が見える。それはいい。ポジション的に集合体のボスっぽい少女に見覚えがある気がするがそんなことは今どうでもいい。肝心なのは集合体の一部に目立つのがいることだ。そいつは頭の後ろが伸びている爺さんだった。……おそらく、きっと、たぶん、信じたくないが、ぬらりひょんだ。ぬらりひょんが幽霊の化け物になっている。


 それを見て妖怪たち驚いて止まっている。


『サプラーイズ!』


 サプラーイズじゃねえええ! 恵空のやつ。こんな録音仕掛けておくくらいなら俺に教えとけや! いや教えたらサプライズにはならないけども。


「……やっぱお前が殺したんじゃないか!! てかこいつらはなんだ!?」


 これは言い逃れできない。恵空のやつなんてもんを仕込んでくれやがったんだ。


「いや、なんだと聞かれても……幽霊」


「こんなぐちゃぐちゃに混ぜられた幽霊がいるか!!」


 いや、幽霊のこと詳しくないから知らんけど。


 そんな無駄話をしている間に集合体幽霊が妖怪たちを襲い始める。


「おやめください。ぬらりひょん殿! 正気を取り戻してください!」


 三つ目カラス天狗が説得しようとしているが効果はでない。というより聞こえているかどうかもあやしい。


 集合体幽霊に襲われたものは、そのまま幽霊に取り込まれ新たに集合体幽霊の一員となっている。えげつないな。


 妖怪どもが混乱しているチャンスに攻撃したいのだが、集合体幽霊のターゲットがこっちに向かないか不安で攻撃できない。恵空には妖怪どもとの戦いが終わったらとあるボタンを押せと言われている。おそらくあの集合体幽霊を退治するものだろう。なので集合体幽霊に襲われたら、最悪それを押せばいいのだが、そうすると妖怪が多数生き残ってしまい困る。


 なのでできるだけ集合体幽霊から離れた妖怪から狙うとしよう。ロケットパンチ発射。


 そうやってパンチを続けていたが、ふと気づくともうほとんど妖怪が残っていない。時間を確認すると一時間くらいしかたってない。短すぎることを疑問に思うが、謎はすぐ解けた。集合体幽霊が敵を吸収していくので殲滅速度がどんどん上がったのだろう。幽霊の体が最初より何倍も大きくなっている。


 驚いたことにまだ三つ目のカラス天狗が生き残っている。空を飛び、集合体幽霊に手をかざすと幽霊数体分が破裂する。怖いわー。あんなのと生身で戦いたくない。


 他にまともに戦えているものもいないので、集合体幽霊がこちらに攻撃してきてもなんとかなるな。三つ目のカラス天狗にロケットパンチを発射する。


 しかし、避けられる。なんどか試すが、どれも当たらない。訓練、というかゲームで小さい的に当てるのは慣れているはずなのになんでだ?


ゲームのときとなにが違うのか考えてみる。……わかった。見た感じあの三つ目のカラス天狗はかなり自由自在に空を飛んでいる。ゲームのときと違うのはこれだ。ゲームのときの相手は飛行機のような感じだった。回避の選択肢に前しかないのだ。真横や真後ろなどには回避できない。しかし三つ目のカラス天狗はどちらともできる。これが当てられない理由だろう。


そしてこの解決方法もすぐに思いついた。ここは宇宙じゃない。地球だ。


自分が操縦するロボを頭から地面に突っ込ませる。そして頭についている爪でしっかり地面を掴む。そして巨大ロボの尻尾を天高く上げて、振り下ろす。三つ目のカラス天狗より少し集合体幽霊とは反対側になるように注意する。振り下ろしながら三つ目のカラス天狗に能力を発動して軽くする。


三つ目のカラス天狗は巨大ロボの攻撃は避けられたが、その風圧までは避けられない。能力で軽くなった三つ目のカラス天狗は集合体幽霊の方に吹き飛ばされる。あとは集合体幽霊に捕まり、三つ目のカラス天狗は集合体幽霊の一員となった。


あとは後始末のみ。恵空に指示されていたボタンを押す。ボタンのそばに穴が開き、そこから大量の白いものが出てくる。それが集合体幽霊にかかり融けるように消えていく。……たぶん塩だな。


 こうして長い一日が終わった。








 二日目。曇り。なにもなし。……え?


 なにもないとなんだか不安だ。恵空からあらかじめ聞いていた二つは撃退はしたが、これで終わりなのか?


あたりは静寂に包まれている。なにもないのは不安だがせっかく敵がいないのだから寝よう。


……眠れない。しょうがない。本当は休んだ方がいいのはわかっているが少しゲームでもして遊ぼう。なに、本来なら三日間起きている予定だったんだから寝れなくても問題ないだろう。さあ、ゲームゲーム。


……くそがっ!! 最悪だ!! ぬかった!! 俺が持ってきていた携帯ゲーム機はタッチ機能があるんだが、それが災いした。セットしているソフトをやる際に、欠かすことができない機能がタッチしないと使えない。しかし俺が今着ている服は手ごと覆っていてタッチ機能が使えない! これではゲームキャラが服を脱ぎ捨てないじゃないか!! 淫乱モードになれないじゃないか!!


……ふて寝しよう。ああ、暇だな。







 ……『暇ですね』――!? ……いかん。うとうとしていたら恵空のいつもの台詞が聞こえた気がした。まだ二日目なので気のせいなのだが、ついもしかして早く終わったのかと期待してしまった。


 そう言えば恵空が羽化を終えたら、なにしようかな。そんなことを考えながら眠りについた。

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