第9話 新設備
「暇ですねー。なにかして遊びませんか? 恋人っぽく!」
別に俺はVRの訓練があるので暇ではない。
だが折角リクエストしてもらったので、可能な限り応えようじゃないか。しかしながら非常に大きな問題があるんだよな。
「べつにいいけど、なにして遊ぶんだ?」
「せっかくいっぱいあるんですからゲームしません?」
「俺が持ってるの全部一人用だけど?」
俺が生粋のボッチで、誰かとなにかをして遊ぶということに不慣れすぎるという問題が。
「え゛? 嘘でしょ? 一つもないんですか? そんなことあります?」
「ああ。そもそも俺はゲームは独りでやるものだと思っている」
「えー。なんでですか? みんなでやるゲームで楽しいのいっぱいありますよね?」
「それは人と遊ぶのが楽しいのであって、ゲームそのものが楽しいとは少し違うだろう?その証拠に、ほとんど一人でそういうゲーム遊ばないだろう?」
本当にゲームそのものが楽しいなら一人でも十分楽しめるはずだ。
「じゃ、じゃあオンラインゲームはどうです? あれなら一人でも皆でも遊べますよ?」
「はんっ! なにが悲しくて見ず知らずのやつとゲームをしなけりゃいけないんだ。そしてそういうゲームは基本的に多人数でやる方が有利だから、わざわざ一人でしたくない。ついでに言うとさっきから皆と言っているが、俺にとって皆には俺以外はいない。『一人は皆のために、皆は一人のために』を一人で体現する、それがナチュラルボーンボッチの俺だ。……ゴホッ、飴くれない?」
長文を力強く発言したら喉痛めた。べつに呪言を唱えたわけでもないのに。
「どんだけボッチこじらせてるんですか!? しかも長文話して喉イワしてるじゃないですか。すぐあげますから待っててください。味はどうします? ソルト? ピーチ エクトプラズマ・ギャラクティカ?」
「なんか明らかにヤバそうだけど超気になる単語が聞こえたけど!?」
「効果はどれも喉を癒し魔除けの力があります」
「そんなパワースポットで汲んだ水みたいな効果じゃなくて味が気になるわ!!」
「ではエクトプラズマ・ギャラクティカでよろしいですか?」
「……ピーチで頼む」
「はーい」
流石にエクトプラズマ・ギャラクティカを頼む勇気はなかった。気にはなるが怪しすぎる。ちょっと安全性を信じきることができない。
ピーチ味をもらい喉が楽になる。
「で、なにする? とりあえず二人で遊べるもの考えてみるか?」
「そうですね」
俺の脳内から数多ある遊びを検索する! さあ、選択肢の数に震えろ!
「まず思い浮かぶのは、ババ抜き」
「およそ考えられる中で最も二人遊びに不適切なものですよ!?」
「次は、大富豪?」
「それも!! というかトランプは全部不適切ですよ!!」
「くっ! ギブアップだ」
「どんだけ手札ないんですか? 本当にもう思いつかないんですか?」
まさかトランプを全禁止されるとは。あとはマジで思いつかない。第一、俺はゲームするときは常に独りで……いや、ある!
「いつかやりたくはあるが、今は色々な意味でできないのは思いついた」
「なんでそんなの思いつくんですか? 一応聞きますけど、なんですか?」
「知ってるかな? 脱衣麻雀っていうんだけど」
「知りませんよ! なんでそんなの思いつくんですか!?」
「女子、ゲームで脳内検索したら出てきた。ゲーセンであったなって」
「検索エンジン無能過ぎでは?」
「検索エンジンが悪いんじゃない。俺の脳内検索エンジンAHooo!は素晴らしい。最高にクールな検索エンジンなんだ。だけど役立つ情報が入ってないとどうしようもないんだ」
「自分で阿呆って言ってるじゃないですか。クールじゃなくてフールじゃないですか。はあ、ボッチをこじらせたあなたに聞いたのがそもそもの間違いですね」
「うんうん。自らの過ちを認めるのは大事だよね」
「どの立場で言ってるんですか?」
おかしい。相手に賛同すると好感度が上がるとネットで見たのだが、なぜだが好感度が下がった気がする。これだからネットの情報は当てにならんのだ。
「というよりVRマシンがあるんだから、宇宙のゲームとかできないの?」
かなりの良案じゃないか? 俺は新しいゲームができるし、恵空のものなら二人でできるものもあるだろう。
「できますけど、恋人同士がやるのにぴったりなのはないですね」
「べつにただ遊べればいいんじゃないか? 現時点でキャッキャウフフなのは無理あるぞ。それで、どんなのあるの?」
「んー……じゃあこのゲームはどうですか? 協力して宇宙怪獣を倒していくゲームです」
「いいけど、それシューティング? 俺クソ雑魚だよ?」
「シューティングです。一人でできるのにどうしてです?」
「俺ゲームだと回避と防御は基本できないんだ。相手を攻撃するのに夢中になってな」
「うっわ。では格ゲーもできないんですか?」
「ああ。格ゲーにいたっては技も満足にだせない」
「それはだせるでしょう!?」
「小さい頃、ゲーセンで小汚いおっさんにパーフェクトゲームでフルボッコにされてな。それから触れていない」
「トラウマになってるじゃないですか」
「今思えば、あれがヒロピンの性癖の目覚めだったんだろう」
「ただのウマシカでした。もうあなたがゲーム下手なのわかりましたから、さっさとやりましょう。べつにミス連発しても怒りませんから」
「ふっ、一発で倒せる雑魚は任せろ」
「よくその台詞でイキれますね」
VRでゲームか。楽しみだ。
ゲーム開始だ。俺の横には恵空であろう人型ロボ。フィールドは宇宙空間だ。辺りには小さな宇宙船があり、俺自身や隣の人型ロボがかなり巨大なサイズであることを伝えてくる。
「待ってください」
開始早々隣の巨大人型ロボから制止がかかる。
「どうした?」
「どうしたじゃありませんよ!! なんで触手クリーチャーを選んでるんですか!?」
そう、キャラクターセレクトで俺はピンク色が艶めかしいテッカテカの触手クリーチャーを選んだ。ぶよぶよとした球体に近い体から無数の触手が生えている。よき。
「心の琴線に触れたもんで」
「だからってなんでそれ選んじゃうんですか!? まともに動かせませんよね?」
あ、本当だ。触手をほとんど動かせない。かなり感覚が違う。えー。シューティングでまともにキャラが動かないとかある?
「恋人同士のやりとりっぽくなるかなって。ほらピンク色だし?」
「今度真剣に恋人同士のやりとりについて話し合いましょう? とりあえずキャラ変えましょうか」
待ってほしい。俺の触手愛はこんなところで折れたりしない! 今まで自分の経験を全てを活用し触手を操ることに集中する! 動け! 艶めかしく! 動け! いやらしく!
「……いやでも結構動かせてる気が」
「そんなわけな――本当だ! おかしいですよ! ふつう無理ですよ!?」
なんか超能力使う感覚で操作するといけた。これが才能というやつか。自分の才能が怖いぜ!……触手の才能ってなに?
「これで問題ないな。いくぞ。俺の触手をたっぷりと味わわさせてやるぜ! ところでこのゲーム、フレンドリーファイアについてはどういった仕様で?」
「ありなしは好きに設定できます。ですが台詞の並びが不穏! 明らかに私を襲う気じゃないですか。そんな触れ合い求めてないんですがね!?」
「ほら、よくカップルが砂浜で水掛け合ったりするじゃん? アレと似たようなもんだよ」
「ほう。その場合私は貴方にビーム照射すればいいってことですよね?」
「え、ちょ、待っ――ぬおおおお!」
その後ビームを触手で頑張って防いだが、手も足も出せずに負けた。
「模様替えしません? あなたの部屋は無駄にスペースをとるものが多すぎます」
部屋に戻ると突然恵空からそう言われた。しかし俺的には恵空が片付けてくれたおかげで最高に広い状態だと思う。
「いいけど、これ以上広くなるの? これが限界じゃない?」
「はい。なので家具を宇宙製のものに変更しましょう。それでスッキリするはずです」
「そうなんだ。じゃあ頼むわ。なにを宇宙製にするの?」
「全部です」
「え? そんな大胆に変更するの?」
「はい。安心してください。気に入ってもらえると確信しています」
「じゃあお願いできる?」
「はーい」
安定のクラゲ機械さんたちが参上して家具を運び出していく。一応、超能力で家具を軽くしておいたので今日は無能感がそれほどでもない。
ずっと見てただけなので、ダメ男感は少しあるが。仕方ないんだ。クラゲ機械たちが効率よく運び出すので、俺が入るとむしろ邪魔になるから仕方ないんだ。
家具を全て運び終えると、今度は新しい家具の搬入だ。ってあれ?
「なんかいっぱい絨毯運んでる? そんなに絨毯いる?」
クラゲ機械たちが運んできたのは、畳を少し細くしたような板が二枚に、ティッシュ箱くらいの大きさの機械の箱が一つと、クラゲ機械の上部に似た半球状の機械が一つ。あとは絨毯を丸めたようなものが多数だ。
「絨毯ではありません。テレビ、ベッド、本棚、デッキなどなどです」
「この丸まった絨毯みたいなやつが?」
「はい。まずはセットするので見ていてください」
そういうと恵空はまず板をさきほどまでテレビがあった場所に板を置き、その上に半球状の機械とティッシュ箱くらいの大きさの機械を置く。
もう一つの板はさきほどまでベッドがあった場所の足の方にある壁際に置く。その上に絨毯みたいなものを立てていく。
最後に透明な絨毯みたいなものが壁に張り付き、変形して本棚の様になる。そこにクラゲ機械たちが本などを並べて終了だ。
「終わりましたよ」
「本棚以外ありませんけど!?」
「むっふ。あなたが絨毯と言ったものがベッドや椅子となります。まあ、見ていてください」
恵空がそう言うと丸まっていた絨毯が浮かんで広がり、後ろから俺を包むように移動する。
「座ろうと思いながら体を任せてみてください」
「なんか勇気いるな」
後ろに体重をかけるとそのまま転びそうで怖いんだよな。
だがここは勇気をだして言われたとおりにやってみる。すると、絨毯は俺の体にそいながら変形していき椅子のようになる。下を確認してみると絨毯は浮きっぱなしだった
「なにこれ? すんごい快適。体にバッチシ合ってる感じがしていつまでも座っていたくなる。いいわー」
「喜んでもらえてよかったです。あとそれはベッドにもなりますから。寝転がりたいと思いながら体重をかければいいです」
やってみる。すると本当に横になれた。そして絨毯が俺を横から包むように変形する。寝袋みたいな感じかな?
「いいわー。このまま寝そうだわ」
「下に置いた板で充電みたいなことをしています。エネルギーは一日は余裕でもつので寝ても大丈夫ですからね。なので同じのをもう一つ用意しているので安心してください」
「宇宙は凄いな。テレビはどうなってるの?」
「はいどうぞ」
恵空の掛け声とともにティッシュ箱みたいな機械からくの字の機械が四つ飛んでくる。それらは俺の目の前でテレビの角の様に展開する。その内側に映像が映しだされる。成程。これがテレビになるのか。
「これはいいな。自由な姿勢でテレビを見れるのか。あとはあの半球状の機械だけど、あれはなんなんだ?」
「あれは今までの機械を管理する機械です。あれがないと思うように機械が動いてくれません」
「へー。しかしこれは便利でいいな。そして恵空が模様替えをしようと言ったのも納得だわ。部屋がめちゃくちゃ広くなった」
「そうでしょう?」
「ああ。ありがとう――っておい!」
不意に本棚を見ると、じつは酷い状態だったのがわかってしまった。
「どうしました?」
「本棚! 本の並びが!」
そう。あろうことか恵空のやつめ、エロ本を全年齢本と一緒くたにしてタイトルであいうえお順に並べやがっている!
感性どうなってるんだ?
「見つけやすいでしょう?」
「見つけにくいわ! そもそも教科書の隣にエロ本配置すんなや。授業に間違えてもっていったらどうしてくれる?」
「官能小説もっていってる分際でなに言ってるんです? というよりそれはおこらないでしょう」
「……まあ自分で言っててもちょっとないかなって思った。まあ、ここは自分でやるよ」
整理整頓は自分でやらないと物がどこにあるかわからなくなるからな。
整理整頓完了。完璧だな。超能力があるのでまとめて運びやすいからこういうとき便利だ。
「ほほう。察するにまず『一般図書のエロ無し』、『一般図書のエロ有り』、『エロ本』、『勉強用図書』って感じにカテゴライズして、その中で作者のあいうえお順に並べ、更にその中でタイトルのあいうえお順ですか」
「なんか恥ずかしいから解説しないでもらえる?」
「私の目の前で一般図書を『これはエロ有りカウントかな~?』って検分しておきながら、なに言ってるんです?」
「……正論!」
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