第24話 巨匠・川瀬尚美監督
おれは普通の高校生で、映画を観た事はあっても出演などは夢想だにしたことすらない。
映画について知っていることを総ざらいしてみても、高が知れていて、むしろ、無知蒙昧というほうが近い。
「もちろんあなたが素人で、演技経験皆無なのも知ってるし、それほど重要な役でも無いけど、他に適当な人物が見当たらなくて…ちょうど映画のメガホンを取っている川瀬尚美監督があちらに見えてるから紹介しておくわ。承諾してくれるならどうせ挨拶してもらわないといけないからね」
「え?なんか聞いた事はあるけど…国際的に評価されている方でしたっけ?」
「カンヌ国際映画祭で特別賞を受賞したり、新進気鋭?というかもう不動の声価を得ている、むしろマエストロよね。女性監督でこんなに日本映画を有名にしたのは前代未聞て言われてる…映画界の大谷翔平ってとこかしら?」
「はあ…まあ恐れ多いけど、後学のために?とにかく会わせていただきます。せっかくだし、どういう方か興味もあるし…生意気みたいだけど?」
姉がつっと立ち上がって、少し奥の席でコーヒーを飲んでいたらしい川瀬監督その人をつれて、もどってきた。
いきなり同席だとおれが面食らって緊張すると配慮してくれたのだろう。
「はじめまして、ハヤトさん、だった?わざわざありがとうネ」
そう挨拶して、「川瀬監督」はにっこり微笑んだ。
「巨匠」の割にはむしろ華奢で、清楚なかんじの綺麗な人だ。
笑うとえくぼが可愛い。
「お話は聞いてくれたのね。私はね、今度の映画には本当に力を入れていて…」
そういえば、と、デジャブのような感覚が訪れて、以前にテレビのインタビュー番組か何かで、こういう独特の理知的な声と話し方の女性を見かけた?確かにそういう記憶が蘇ってきた。そうして、「燃える白虎」というゲージュツ映画をその時に観たことも思い出した…
「続く」
」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます