第21話 天外魔境の女神
「ハヤト!」本当に映画のワンシーンのような、光景だった。
ピンク色の、ラメだかベルベットだかの光沢のある生地のイブニングドレスを纏った、星華絵が華やかな笑顔で手を振っている。
限りなく「上流社会」らしい煌びやかなムードの「天外魔境」の、まさに「女帝」 という風格があった。
オレは普段から醜い風貌のせいで、現実というものをそのままに受け入れられず、いつも違和感や齟齬を抱いていて、「ここでは無い本当の世界」 がどこかにあって、今はそこに至るまでの困難なプロセスの途上…どうもそういう発想をする癖がある。
「今、ここ」 に生きることが大事だ、まず行動せよ、人生の秘訣は生きることだ…そういう人生論というかサルトルの言う「アンガジュマン」 ?みたいな思想にも馴染みにくい。
醜いニキビにしろ運動神経が鈍いことにしろ現実への適応という点で最悪の自分固有の特徴が?だいたい多すぎるのだ?
で、ひたすら”
なぜよりによって、この「おれ」が、そういう呪われたような人生の主人公になってしまったのか?
そのことは畢生の課題というか、この小説の中心的なテーマでもあって、それは物語の進行と渾然一体になりつつ、考えて、少しづつ解き明かしていこうと思う。
…ともかく、おおよそ、そういうどこに行ってもなんだか場になじめずに居心地が悪いおれが、いきなりに日本の上流社会の上澄みというか殿堂というか、大金持ちやら有名人士ばかりが跋扈している、”天外魔境”の真っただ中に踏み込んでしまった。
人生最大のピンチ…そういう救われない気分でいるおれのもとに、マッタク何の気どりも衒いもなく、自然体のまま、屈託のない輝くような美貌をキラキラさせながら姉の田所みゆき、もとい星華絵が駆け寄ってきた。
「ハヤト!案外早く着いたわね!ここってちょっとわかりにくいけど、内装とかゴージャスですごいでしょう?叶姉妹さんとかにもよく逢うのよ!この間は天皇が来ていたわ!」
「て、天皇?姉さんのこと知ってた?」
おれは思わず尋ねた。
「ええ。よくテレビで観ていて、愛〇様が部屋にポスターを貼ってくれてるとか…畏れ多くて二の句が継げなかったけど」
「週刊誌のグラビアになりそうな構図だね。「華麗なる出会い…星と王子様」なんてさw」
「アハハ。まあ、こっち来て座って。実は今日、呼んだのはね…」
姉のアーモンドアイ、大文字のCreaterが、造形美の粋を凝らした、という趣の黒目がじっとこちらを見つめている。
毎度のことながらおれは緊張してドギマギし、発汗と動揺の極みに達していた…
<続く>
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