第20話 シブヤ@天外
辿り着いた、”日本一の繁華街”の、かなりな有名な高級店らしいお店の名前は、「天外魔境」だった。
マニアックなネーミングだが、おれのような貧乏な高校生には、上流階級とか芸能界とかはまさに異次元というか、踏み込んだら生きて戻れない”魔境”、アマゾンのジャングルのようなイメージである。
おれは自分では容貌に似合わぬロマンチストだと思っていて、なんにつけ面白いようなファンタジックなフェアリーテイルめいた幻想を抱きたがるのであるが、実際には金欲とか性欲だけの穢らしいだけの修羅場が展開しているだけかもしれない。が、
例えばシドニーシェルダンという人の小説だと切り口が明るくて、悪役でも美女でもヒーローでもどこか憎めなくて、好感の持てる…だからハリウッドスター的に個性的な魅力に富んでいるというのか、そういう人物ばかりで、だから上流社会の愛憎劇でも陰鬱な話に感じない。こういうのは作家の人徳だろうと思う。
「天外魔境」は、明るいシャンデリアでキラキラピカピカの、ゴージャスでラグジュアリー極まりないオーナメントをふんだんに施していて、レストラン兼カフェバー?会員制の秘密バーのようなところか、と入ってすぐにおれにも見当がついた。
滅多な覚悟では入ってくるなよ、とかシャレでそういう脅しを一般人にかけているつもりだろうか?…だから姉貴くらいにある程度に階段を昇りつめて超一流芸能人の称号を手にしたようなスターでないと来れないようなお店か?どっちにせよ”ザ・スター”なる華麗なる通称を頂戴している姉ならまあ日本全国どこでも顔パスだろうが…
「ハヤト!」
姉の嬉し気な、はしゃいだ感じの華やかな美声が響いた。
おれはドキッとして、急にハリウッド映画の世界に自分が忍び込んでいたのを見つかったような気分になった。
<続く>
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