第19話 Linear Sequence
おれは友達がいない。
いるようなことを書いたりもしたが、見栄を張っているだけで、よく考えると、LINEのやり取りをしてくれるのも姉だけだ。
自意識過剰で、で、すごいようなニキビ面なのに、変に繊細で、自分の容姿や性格その他に常に葛藤していて、自分という存在を肯定できない。
自虐性格というのか、いじいじと優柔不断なせいで、小さいころから常に”イジメ”に遭ってきて、大変なトラウマができている。「おれなんかこの世から消えてなくなればいいのに」というのが口癖で、実際に大多数の同級生も、教師も、家族も、世間一般の本音もそれだろう、と思い込んでいる。
が、姉だけは違う。
おれにはそれが分かる。
姉は小さいころからいつもおれがいじめにあうと、身を挺して守ってくれた。なにもかもわかっているのに、何も言わなくて、それでも困っているときには必ず助けてくれた。自分では果てしない遠距離を猛スピードで飛空しているつもりの孫悟空が、実はお釈迦様の掌の上を飛んでいるだけだった…姉と自分をひきくらべた場合に、いつもおれはそういう故事を連想してしまう。
あらゆる面でおれとは根本的に違う次元に存在しているがゆえに、予定調和のごとくに、ごく自然に、姉は”雲の上にまします大スター”となった。
運命はある。が、それはたぶん遺伝と環境の関数、その方程式の敷衍で、必然的なものだ。介在する無数の因子があっても、解析が可能な合理的な科学であり、数学だ。占いだってただ荒唐無稽ではだれも耳を貸さないのと同じだろう。
姉の運命とおれの運命…それを何とか擦り合わせたい…普通なら正気を疑われるような、そういう「夢幻境の虹」を、おれはひたすら夢見て、希求して、実現しようとしている。姉と身も心も結ばれて、一つになって、地上を見下ろすような
”♬~over the rainnbow~♬”
と、急にまた、スマホが鳴って、姉からLINEの通知が来た。
「…ハヤト、緊急の要件があって、至急会いたいです。電話ができない状況なのでLINEしました。場所はシブヤの○○というカフェバーで…」
いったい何だろうか?おれの胸は高鳴った。が、こんなことは初めてだが、無視するわけにいかないし、否も応もないので、さっそく身づくろいをして、とりあえず、指定のカフェバーとやらに急行することにした…
<続く>
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