第12話 半端でない姉の圧巻の演技
「ザ・スター」と異名をとる姉の星華絵の人気は、今や往年の大スター・原節子や山本富士子、吉永小百合、大原麗子らを遥かに凌駕する勢いである。
ハリウッド女優だとイングリット・バーグマン、モンロー、ヘップバーン、シャロン・ストーン、ジョディ・フォスター、そういう綺羅星のような大スターの系譜があるが、旭日昇天の勢いの新進スターレットの姉はいずれ海外にも進出してそういうレジェンドたちの後継者ともなりうる超大女優の器ではないか?巷ではそういうもっぱらの噂なのだ。
おれはその日、放課後に 暇だったので、ちょうど絶賛上映中のロードショー・星華絵主演の映画「時空を超えるマーメイド」を観に、近所の「亜米利館」という映画館にに立ち寄った。
…20億光年の彼方にある水の惑星「メルラ・サポー」には人魚たちの常夏の楽園があった。人魚たちの女王は名前を「クリオディーネ」と言った。これが主演の星華絵の役名。
「美貌」で「超絶バディ」のクリオディーネが優雅に海中散歩をしているところに突然、時空間を超えるエア・ポケットが穴を開けて、神秘的なブラックナイトがあらわれる。
「自分にとってどんぴしゃりの理想のパートナー」を全宇宙の全ての時間と空間の系列の中からたちどころにサーチアウトできるという”プラトニア”という魔術の秘伝書を手に入れ、早速古代語のスペルをキャストしてみたところ、ここに運ばれてきたのだという。
…クリオディーネ役の星華絵は金髪碧眼で、「人魚の女王」というエキゾチックでファンタジックな、難しい役どころを、完璧に、ポエティックに、気高く、心憎いまでに周到に演じ切っていた。
まるで「Gone with the wind」の中ででスカーレット・オハラそのものだったビビアン・リーのごとくに…
…「それではあなたは私にとっても唯一無二の理想のパートナー、ホワイトナイトなの?見かけは正反対の黒騎士だけど…ウフフ」
そう言って微笑んだ華絵の面差しは、碧い深い瞳がキラキラと耀き、彫り深く端正極まりなく、金髪は風にしなやかにたなびいていて、底知れないようなミステリアスさを湛えていた。
その顔はまるでざわざわと鳥肌が立つくらいに美しかった!
もう入神の演技とか言うよりは、女神そのものがそこにまさに現前している!
…シビれるような120分に「ザ・スター」・星華絵の魅力を存分に堪能しきったおれは、恥ずかしいことだが2度射精し、一回失禁していた。
観客の中には若い女で、感激のあまりに失神したのが担架で運ばれたりもする騒ぎがあった。
大げさなようだが、空前の大ブームを巻き起こしている星華絵の魅力を語るには、まだまだこの程度は序の口なのである…
<了>
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