第11話 地の底を這いずり回る?高校生

 

 おれ、田所隼人は既述のごとくに高等学校の1年生で、男子校だから、女友達も無くてもう1年ほど若い女と話した記憶がない。生まれてからステディな関係のガールフレンドができたこともない。「彼女いない歴=年齢」というよくある悲惨なパターンである。

 何度も書くが、ひどい思春期性の脂漏性湿疹、面皰ニキビが顔面いっぱいに花盛りなので、顔というものではなくて、なにか趣味の悪いグロテスクな見世物でも一人で演じているような?おれが歩いているとそういう按配になる。

 アトピー性の皮膚炎とかでもそうかもしれんが、こういうブサイクで見るに堪えない顔面の高校生は、そういう人もたまに見かけなくもないが、自分の気分も悲惨だし、周囲の扱いも「腫れ物に触る」というより「悪性腫瘍に触る」というような按配で、誰からもどこでも、いつもなにか悪い物でも見たかのような?変な表情ばかりされるというレ・ミゼラブルな日常なのだ。

 で、甚だしくそういう現実と隔絶した、唯一のヘヴンリーな、夢のようなフェイズというか、汚れた泥の中に宇宙一美しい造形と言われる蓮の花が開花したというような、そういう奇跡が、姉である星華絵の存在なのだ。

 男子校の友人などというものはだいたいがお互いに軽蔑しあい罵り合うために存在しているようなもので、ライバル同士の切磋琢磨というと聞こえはいいが、実際にはこすれ合って軋轢しあって?だんだんすり減って、疲労劣化していくというような?そういう趣もないではない。

 ヘッセの「車輪の下」とかは美しい青春小説で、全寮制の神学校の中で上級生とのBLめいた物語とかあるが、未熟で多型倒錯的な?本能や性欲が粗暴に横溢しているだけの、現代日本の凡百の男子校の空間には、そういうロマンな出来事は想像の外、及びもつかず、毎日が地獄というか、ほぼ地の底を這いずり回っているという、「車輪の下に踏みつぶされている蛙」、おれが自分の青春を小説にしたらそういうタイトルがつきそうな、それがまあ、日常的な現実というう昨日今日なのである。


<続く>

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