第9話 暗黒魔王・メシス
最近は異世界ファンタジーというのがネット界隈では人気をさらっていて、おれが書くのもそういう物語である。
「…この世のすべての闇、すべての暗黒の側面、すべてのネガティヴなるものの、いわば集大成であり、象徴的な存在、”BLACK ICON”、それが『暗黒魔王・メシス』その人だった。
彼はひどく醜い男で、いつもダースベーダーのごとくに仮面を装着している。
素顔は誰も知らない。
見たものは殺されるらしいという噂だ。
決して喋らず、相手の眼を見ることも決してない。コミュニケーションというものを完全に拒絶している。精神エネルギーのむだな流出を恐れるがゆえにしゃべらないらしいのだ。そうして、全ての存在物を烈しく憎悪している。できうるならば、自分をも含めてすべての宇宙の構成物を完全に破壊して粉みじんにしたい。
それがメシスの念願らしいのだ。
メシスがそうした孤独で歪んだ、比類のないような烈しい憎しみで凝り固まった悪辣な男になった所以は誰も知らない。
ただ、若いころには気性の明るい、陽気な人物だったという噂もある。
彼にとっては許しがたいような、非常にトラウマティックな出来事があって、地獄のような辛酸をなめさせられた、そういう経験から彼は世界のことごとくすべてを敵とみなし、蛇蝎のごとくにすべての人間を嫌うようになり、全てを破壊しつくしてしまいたい、そういう宿願を抱くに至ったらしい。
「メシス」という名前はいわゆる「復讐の女神」のネメシスから来ているらしい。
ひたすら人類すべてに復讐をして、殺し尽くす…そのために彼は深山幽谷に籠って厳しい修行を積んだのだ。困難の末に邪教の神の啓示を受けて、ひそかにその神に匹敵する魔力を身に付けた。
偏在しているようで、どこにも存在しない。正体は杳として知れない。
が、誰も無視できない。彼の名前を聞くだけで誰もが震え上がる。
メシスはそういう不滅で最強の「JOKER」になりあがったのだ。
もう誰も彼に逆らえなくなった。
今彼がどこにいて、何をしているか、何を考えているかは誰にもわからない。
ただ、彼の烈しい憎悪に人類は、この世界は呪われていて、その呪いから逃れることはもう誰にもかなわないのは確からしかった…」
<続く>
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます