第4話 華麗なる芸能界
おれの姉貴は先述の通り、星華絵というアクターである。芸能界に入る最初から、数多の芸能事務所が凄まじい争奪戦を繰り広げた。類稀な美貌と演技力は夙に知れ渡っていて、宝塚歌劇団のトップスターとして君臨していたのだからむべなるかな、である。
結局、一番現ナマを積んで、契約を勝ち取ったのは最も老舗というか抱えているタレントの多い、オリプロという事務所だった。
最初に挨拶に行った時には、「ゴッド姉ちゃん」こと阿田アキ子に、うさん臭そうにねめまわされて、「あなた新人さん?芸能界はね、礼儀としきたりとあいさつと辛抱とでできた封建社会、年功序列社会よ。ちょっとかわいいからって天狗になってるとすぐ意地悪されて潰されるからね。覚悟しときなさいよ」と釘を刺された。
賢明な姉貴は契約金はまず全部貯金して、投資のコンサルタントを雇い、「FLOWERSTAR」という個人の投資会社を立ち上げて、運営はプロに任せて、雪だるま式に貯金が増えていくシステムを構築した。性格は堅実で、ブランド品に狂奔したりする他人指向のバカな女子大生とかとは発想が根本から違っているのだ。
前述のように今のところ女優としてのキャリアを順調に積み重ねていて、芸能生活は順風満帆、旭日昇天と言ってもいいくらいの勢いなのである。
(言い回しがおれはだいたい少し古いが、これはおれが日本の近代小説とかのマニアのせいで、ご寛恕願いたい。)
姉貴の一日はまず、ロールスロイスの華麗なるお出迎えから始まる。
AM7:00。「870(ハナエ)」というナンバーの特注のアメ車が颯爽と到来する。わりと閑静な、郊外の住宅街にある我が家の雰囲気とはかけ離れた、ピカピカの外車が玄関先に停まったところは壮観?である。
ほどなくして、これも周囲とは明らかに不似合いな、ハリウッド女優のような端整でスレンダーな9頭身のプロポーションを誇る、美の女神もかくやというようなオーラを放っている星華絵が、電光石火の早業で後部座席に乗り込む。
マネージャーから今日のスケジュールやその他の注意事項をホウレンソウされながら、眠気覚ましにキリマンジャロの珈琲を啜る。
今日も多忙だ。ドラマや映画の撮影にほかに、デヴューが決まっているソロシンガーとしてのシングル曲のレコーディング、イベントのゲスト、動画配信のチャンネルの撮影、写真集やグラビアやもろもろのメディア露出の撮影多数、大河ドラマのナレーション、映画の宣伝のバラエティ番組やワイドショーへの出演、etc,etc
今最も旬で、乗りに乗っている「ザ・スター」こと星華絵の華麗なる極彩絵巻のような24時間が、今すべりだしたところだった…
<続く>
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