第2話 それにひきかえ草
…そうして、その弟のおれが「田所隼人」<たどころ・はやと>という名前で、高校1年生だ。それではそういう超美女の近親のおれも、水も滴るような美男、イケメン?
そう想像する向きが多いかと思うが、あいにくとこれが、超ブサイクなのである草
親父が酒を飲みすぎた夜に胚胎したのか?予防接種で発〇障碍になったのか?もしくは突然変異体か?
それは不明だが、まず一見して「青春捨ててます」と顔で表現しているような醜男なのだ。
加えて、肌が
当然のように顔全体が月の表面のように、月の表面でさらに核戦争が起きた後のように、ぼこぼこと赤黒いニキビが花盛りである。
いくら洗顔しても、薬を塗っても、皮膚科に通っても、ニキビの大群は毎日雨後の筍のように次から次へと顔を出してくる。今はコロナ禍でマスクをしているからましだが、さもなければおれは悲観して、傷つきすぎて、登校拒否になり、自殺していたかもしれない…コロナ禍様様、と心中では武漢の方向に向けて手を合わせているのだ草
うちでは毎晩しかし、夕飯を食うし、家族は姉とおれと両親の四人で、当然マスクはできないから、日馬富士という元横綱の若いころの再現図か?wとでもいうようなひどいご面相を煌々と明るいLED照明の下で晒さなくてはならない。
当然ながら、家族の、おれの美しいお肌への不評は絶頂に達しつつあった。
沸騰していた。
「ハヤト、その顔はどうにかならんのか?」これは父の田所堯<たどころ・たかし>。40歳で、童話作家だ。まあ美男で、才能もあるらしい。東大を出ている。
「あちこちの皮膚科をハシゴしているんですって。もうセブンスオピニオンまで行ったって!どの先生も匙を投げていて、アトピーでもないのにこう酷いのは珍しいから、学会の報告の資料に使ってもいいですかね?なんて依頼されたらしいわ。不名誉極まりないにもほどがある!」これは母の田所志摩子<たどころ・しまこ>。38歳で、姉の母親らしくかなりの美貌だ。小股の切れ上がった?美魔女入門生といった風情。ダンス教室に通っていて、プロはだしの腕前。ユーチューブのチャンネルを作って、TWICEとかの振付を真似て動画配信して、だいぶ稼いでいるらしい。
…団らんの食卓のはずの空間には、ピリピリした険悪な亀裂が走り始めた…
そうして、じっとうつむいて口をもぐもぐさせていた姉の星絵が、箸を置き、きっと前を向いて、おもむろにしゃべり始めた…
<続く>
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