国民的大女優の弟なのに超ブサイクなので不倫恋愛の成就までが前途多難前途遼遠である件

夢美瑠瑠

（これは、今日の「姉の日」にアメブロで連載開始した作品です)

１　姉は大女優

　僕の姉は、＜華　星絵（はな・ほしえ）＞という女優なのです。キラキラした名前から想像もつくが、宝塚歌劇団出身で、絶世の美女だ。本名は「田所みゆき」といって、甚だ平凡だ。じゃあ化粧を落とすと名前のごとく平凡な容姿なのかと思うかもしれない。が、姉貴はすっぴんでも道を歩いていて振り返らない人はまずいない、という嬋娟にして窈窕たる美女である。一度振り返らない人がいたのでおやっと思ったが、よく見るとその人はよたよたしながら白い杖をついていた。

　宝塚でもトップスターだったので、若くして未来は約束されたも同然、というセレブでギフテッドなのだが、いざ芸能界で女優デビューすると、その卓越した演技力に誰もが舌を巻いた。

　姉貴はアイキューが１８０あって、メンサの会員である。ジョディ・フォスターというハリウッド女優の向こうを張っている感じの天才肌である。」

　天才なので、台本は一度読んだら相手役のセリフまですべて完璧に記憶している。　　

　持ち前の超絶的な記憶力と読解力を駆使して姉は台本や原作本やその脚本家のほかの著作やらまでもたちまち読破して、熟読玩味する。普通の女優とかとはホンの理解の深さに月と６ペンスくらいの懸隔があるわけだ。役の人物像やセリフの解釈も共演者が驚くほどに深遠で、ユニークで、芸術的と言えるほどに文芸的な昇華がなされていた。これで名演技にならないわけがない。…

　これに加えて並外れた美貌とミュージカルで鍛えた美声がある。

　たちまち日本中が熱狂して、”星絵フィーバー”現象が巻き起こった。　　　　

＜続く＞