第44話 検証

 怒りにも怨嗟にも見える感情を発露させ、暗殺者は目にも止まらぬ速度で移動した。……いや、しようとした。


「な、なんだと!? 千切れない?」


 ダークエルフの美貌をオーガの如き猛々しさに変貌させた暗殺者。その体を先程俺が作った触手が四方から絡みつき離さない。


「う、嘘だ。こんな、ご、ごんな、な、なぁああああ!!」


 力と引き換えに理性を失う類いの呪術なのか、暗殺者は元の冷静をすっかりと消失し、壊れたように暴れ回る。無論そんなことで俺の触手が切れることはない。


「気はすんだか?」


 魔法で鎖を直して、暗殺者を元の格好に戻す。このままさっきの続きをしても良いが、呪術を解かないと会話もままならない。


 俺はパチン! と指を鳴らした。


「なんと?」

「ちょっと、どうやりましたの?」


 オーガのような巨大な体が一瞬にして人間種の雌としての凹凸ある体に戻ったのを目の当たりにして、メイドと女剣士が目を見開く。ダークエルフの赤い瞳が呆けたように俺を見つめた。


「なんなのだ? お前は……いや、貴方は一体」

「さぁ、続きと行こうか」

「待て! ……それには及ばない。話す。いや、私の話を聞いてくれ。私に貴方を拉致するよう命令したのはーーむぐ?」


 触手がダークエルフの口内へと侵入して無駄口を止める。


「あの、彼女今、喋ろうとしていませんでしたか?」


 サーシャの指摘通り、どうやらこのダークエルフは完全に反抗心を失ったようだ。こうなった以上「く、ころ」を言わせるのは諦めた方がいいかもしれない。なので次の検証に入ることにした。


「聞いてますの? 彼女、今ーー」

「油断させる罠に決まっているだろ」


 俺の断言を否定しようとするかのようにダークエルフが声を上げるが、ぶち込んだ触手のせいで「んー。んー」としか聞こえない。


「そう、かもしれませんけど。一応話くらい聞いてみるべきではありませんの?」

「いえ、ご主人様の言う通りであります。慈悲は必要ないのであります」


 メイドが待ってましたとばかりに刃物を手にした。


「しまえ。拷問する必要はない」

「なんと!? ではご主人様はこいつをどうするつもりなのでありますか?」


 メイドの質問に応える代わりに、俺は触手を操ると女の体を持ち上げて空中で卑猥に足を開かせた。


「まぁ、見ていろ」


 次の検証。触手責めは一体何がおもしろいのかを試してみることにした。

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