第50話 クレイス

「……マッチョだな」


精霊の中で俺と親和が高いのは、水・土・風・火の順番だ。

郷間達のレベル上げを終え、家に帰った俺はアクアスの次に相性の良い土のクレイスを呼び出した訳だが……


出て来たのはマッチョな女性だった。


流石に台場みたいな筋肉お化けではないが、女性にしてはかなりの筋肉質な体型だ。

身長は1メートル80行くか行かないかぐらい。

ボブの茶髪に、同色の瞳。

顔立ちは童顔気味だが綺麗に整っており、柔らかなおっとりとした感じの美少女である。

胸は筋肉質な体つきの割に相当大きく、多分Eは超えていると思われる。


因みに、異世界ではアクアスの茶色版みたいな姿をしていた。

まあこれは精霊全てがそうで、4体とも只の色違いだったのだが、どうやらこの世界だとそれぞれの特色が出る様だ。


「蓮人様ぁ。クレイス参上ですぅ」


筋肉質な体型に似合わず、その声は子供の様にかん高く、若干舌ったらずだな感じだった。

所謂アニメ声えって奴だ。


「久しぶりだな、クレイス。何故か魔王が生きていて、しかもこの世界にちょっかい掛けて来ている。だから以前の様に俺に力を貸して欲しい」


……ん?


俺の言葉に、一瞬クレイスが少し暗い表情を見せる。


「どうかしたのか?」


「いぃえぇ。なんでもありませぇん。蓮人様の為にぃ、クレイス頑張りますぅ」


気のせいだったか?


しかし、彼女の子供っぽい声と喋り方はやはり違和感が凄い。

顔だけ見てればそうでもないんだが、首から下とのミスマッチがなんというか。


≪体つきは立派ですが、クレイスは我ら4人の中で最も若く、言ってしまえば末娘に当たります。そのせいか、少し甘えん坊の気質がありまして……≫


クレイスへの違和感に対し、アクアスが説明をしてくれる。

精霊にも年齢がある様だ。


「そうなんですよぉ。私が一番下なんですぅ」


アクアスの返答に合わせた言葉を、クレイスが口にする。

俺に対する内側からの念話だった訳だが、どうやら彼女にもそれは聞こえていた様だ。

精霊同士の繋がりの様な物だろうか?


「しかし……結構きついな」


精霊の同時召喚を、以前は行えなかった。

アクアスとの親和が上がったお陰でクレイスを呼び出せこそしたが、体への負担がかなり大きい。

ゴリゴリ魔力が減っていくのを感じる。


「蓮人様、ふぁいとぉ~」


クレイスが可愛らしい声と共に、拳を天につきあげる。

ビジュアルのせいか「我が人生に一片の――」って言葉がどうしても浮かんでしまってしょうがない。


≪マイロード。分身を生み出して頂いてよろしいでしょうか?≫


「ああ、構わないけど?どうするつもりだ」


≪クレイスをそちらに憑依させれば、肉体を維持せずに済む分負荷が楽になるかと≫


「成程。けど、それなら俺の体に憑依させればいいんじゃ?」


「いきなり蓮人様のぉ、本体に憑依なんて恥ずかしいですぅ」


クレイスが両手で頬を押さえ、筋肉質な体をくねらせる。


何が一体恥ずかしいというのか?

というか、異世界時代に何度も憑依させた事がある訳だが?


≪今の状態では、マイロードの肉体に私達精霊を二体宿すのは難しいかと≫


成程。

2体同時の憑依は無理という訳か。

アクアスは‟今の状態„と言っているで、相性を上げて行けばそのうち複数同時憑依も出来る様になるのだろう。


俺は魔法で分身を生み出した。


分身は俺の血肉を元に生み出されてはいるが、その力はあまり強くはない。

能力的には大体レベル5の能力者位だ。


動かし方としては、直接俺が動かすのと、ルールを付与しての自動行動の2種類がある。

まあ今回はクレイスが入るので、コントロールは彼女に任せる形でいいだろう。


「お邪魔しますぅ」


見た目に合わない気の抜ける言葉遣いで、クレイスが俺の分身へと憑依する。

その瞬間、分身の体に変化が起きた。

腕や足が膨らみ、あっという間に筋肉達磨の様なマッチョになってしまう。


「……」


≪相性の問題で、そのままの形では収まらなかった様です。現在はマイロードの分身の筋肉に、クレイスの筋肉が重なっている状態であるかと≫


「ムキムキさんにぃ、変化しちゃいましたねぇ」


台場みたいな体格になった俺の姿から、クレイスの可愛らしい声が漏れだす。

余りにも不気味過ぎて、最早何かのモンスターにしか見えなくなって来た。


「ああ……うん、なんだ。悪いけどちょっと姿を変えさせて貰うぞ」


流石にこれは気持ち悪い。

それに同じ顔と言うのもあれだしな。


「はぁーい」


俺は魔法を使い、クレイスの宿った分身の見た目をコントロールする。

その際、本来の彼女の姿より筋肉と身長は減らしておく。

そっちの方が可愛らしくていいからな。


妹っぽくて。


魔法によってマッチョな俺が、おっとりとした感じの可愛らしい美少女に生まれ変わる。

うん、我ながら完璧な造形だ。


「蓮人様ぁ~。筋肉と背丈がぁ、足りてませんよぅ」


そしたらクレームが来た。

どうやら本来の姿の方がお好みらしい。

仕方なく俺は筋肉と身長をクレイスに付け足してやる。


……まあ別にいいけどな。

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