第46話 身体強化

≪能力者の持つ、特殊能力を習得されては如何でしょうか?≫


特殊能力か……台場の持つ身体強化辺りを使えれば、確かに大きなプラスになる。

だがアクアスの案には無理があった。


能力者プレイヤーの特殊能力は、取得難易度が高いのだ。

とてもではないが、戦いながら習得する事など出来ない。


≪普通ならば、確かに難しいかと思います。ですが、マイロードとの相性の良い身体強化ならば、私が補助すれば戦いながら習得する事も可能かと≫


「マジか!そいつは助かる!」


「戦闘中に何をぶつくさ言っている!」


「おっと!」


イフリートの突進を躱して斬り付ける。

当然ダメージは直ぐさま再生され、奴は大きく弧を描いて再び突進して来た。

それも素早く捌く。


≪マイロード。無茶苦茶でいいので、無理やり能力の発動をお願いします≫


「分かった。身体強化!」


能力を発動させる。

習得出来ていないので、本来ならこの状態では絶対に発動させる事は出来ない。


だが――


「本当に発動しやがった」


俺の力が増した事がハッキリと分る。


≪私の補助で無理やり発動させています。体に慣らして習得なさってください≫


「わかった」


スキル自体は発動しているが、まだ習得自体は出来てはいない。

ここから体に感覚を馴染ませて、そこで初めて俺の力になる。


「はぁ!」


力を体に馴染ませる様に意識し、イフリートの相手をする。

飛んで来る炎の槍を斬り飛ばし、奴の突進に合わせて俺は一撃を叩き込んだ。


「レベル1でも馬鹿にできないな」


明らかに体の動きに違いを感じる。

大幅なパワーアップとまではいかないが、レベル1でも自覚できる程度には効果が出ていた。


身体強化の効果は2種類。

固定値の加算と、それと乗算だ。


装備による補正抜きの俺の能力が1000とするなら、固定の方は20程度。

乗算の方はそこから5%アップ。

つまり合計71――7%程能力がアップした事になる。


劇的な変化ではないが、体感するには十分なレベルだ。


≪乗算部分は本来オマケ程度なのでしょうが、マイロード程高い能力だとそちらの方が恩恵が大きくなる様ですね≫


「ん?」


能力を慣らしながらイフリートと戦っていると、突然俺の能力が上がる。

数字にするなら10程度。

微々たる物ではあるが、勘違いではないはず。


≪Lv1の習得が完了したようです。どうやら能力の習得に合わせて、マイロードも覚醒者としての普遍的な力を得た様ですね≫


能力者プレイヤーはレベルに応じ、その身体能力が上がる。

どうやら身体強化を取得した事で、俺も彼らと同じになった用だ。


「1を習得したんなら――次はLv2だ!」


Lv2を発動させると、俺の能力がさらに上昇する。


だが先程よりも上がり幅は低めだった。

固定上昇分は同じだが、乗算の方が5%から7%にしか上がらなかった為だ。

どうやら毎回5%ずつ上がってはくれないらしい。


「LV3――」


習得する度に、順次次のレベルを発動させる。

その度に、俺の動きは鋭く、力強くなっていく。


「Lv4――」


「どうやら何かしている様だな。勇者よ」


イフリートがその動きを止める。

此処まで来ると、流石に奴も気づいた様だ。

此方の力が増して来ている事に。


だが、だからといって奴に出来る事など何もない。

殺せないとはいえ、単純な強さならこちらの方が上だからな。


勿論……奴に何らかの隠し玉が無ければの話ではあるが。


「ああ……直ぐに決着をつけてやる」


「面白い!」


奴が再び突っ込んで来る。

その行動に変化はない。

どうやら何か手がある訳ではなさそうだ。


俺は引き続き、スキルの習得に努める。


Lv5、Lv6と順調にスキルを習得していき。


そして――


「Lv7!」


ここまで上がった能力は加算部分が20×7で140。

乗算が5%+2%×6で17%。


覚醒者としての能力はレベル1で10しか上がらなかったが、2では20、3で30、4は40、5と6が50加算と想像以上に伸びてくれている。

合計は200と、加算部分だなら身体強化以上だ。


全ての数値を合算した今の俺の力は1567。

元の1,5倍以上。

まあ装備の効果も含めて考えると、4割弱上昇といった所か。


――これなら何とかなりそうだ。


≪念のため、レベル7も習得しておいた方がよろしいかと≫


「ああ」


カタストロフは消耗が大きく、そう何発も打てる技ではない。

万一倒せなかった時の事を考えて、万全を期させてもらう。


「遅い!!」


突っ込んで来たイフリートを軽く切り裂く。

能力が大幅に上がった今。もはや奴の攻撃はレベル上げの為の準備運動でしかなかった。


≪マイロード。レベルが7に上がりました≫


力が上がる。

今度も50程。

どうやら能力者の加算はレベル5以降は一律の様だ。

まあ十分だが。


「待たせたなイフリート!今からテメェを地獄に叩き落してやる!!」


「面白い!見せて見るがいい!不死身の我を倒す程の力を!!」


「ソニックウェイブ!!」


斬撃波を大量にばら撒く。

それはイフリートの体を細切れにした。


「はっ!そんな攻撃などで私を倒せると思っているのか!」


そんな事は、言われなくとも分かっている。

ソニックウェイブは奴の足止め用だ。

いくらパワーを上げても、躱されては意味がないからな。


奴の動きを止め、回復までの一瞬で――


「本命はこっちだ!カタストロフ!!」


俺は渾身の一撃をフルパワーで放つ。


「ぬぅ……おおぉぉぉぉぉぉぉ!!!」


イフリートの体が俺の放ったエネルギーに飲み込まれ、端から崩れる様に消滅していく。

そしてその姿は一片の欠片も残す事なく、跡形もなく消え去った。


「やったか……」


≪気配が完全に消えました。お見事です、マイロード≫


「アクアスのお陰だよ」


彼女がいなかったら、冗談抜きで危なかった。

勿論負ける様な事はなかっただろうが、此方が勝つ手段もアレを使うしかなかったからな。


完全に彼女がMVPだ。


≪お褒め頂き。恐縮です≫


「しかし……」


何とか奴を始末する事が出来たが、全く気分は晴れない。

一度蘇ったなら、もう一度も十分あり得る。

それに魔王の事もあった。


なぜ生きていたのか。

どうやって干渉しているのか。

正直謎ばかりだ。


「まあ……取り敢えず特殊能力は全部取っとくか」


今後も同じ様な事が起きる可能性は高い。

何かあった時に対応できる様、有用な物は取得しておく事にする。


……魔王の好きな様にさせる訳にはいかないからな。


目の前にダンジョンクリアを表示するパネルが現れる。


「取り敢えず、玲奈達にどうやって説明するかだな……」


真実を全て話すべきか。


それとも――



◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆


ここで1章終了となります><


そして恒例の宣伝タイム!


『スキル【幸運】無双~装備が揃ったパーティーから俺は追放されてしまう。幸運の揺れ戻しでドロップがノーマル固定になって資金繰りが厳しい?しるか!俺は自由にやってるんだ!今更あやまってももう遅い!』


パーティーを追放された幸運だけが売りの青年が、とある目的のためダンジョンクリアを目指す物語になっています。

カクヨムコン用を優先して今は更新が止まっていますが、ボチボチ再開していく予定です。


――あともう一つ!


『脱獄賢者~魔法を封じられた懲役1000年の賢者は体を鍛えて拳で全てを制圧する~』


仲間に裏切られ、魔法を封じられた賢者が脱獄して復讐を果たす物語です。

完結済み><

少々暗めのストーリーですが、どちらもよろしくお願いします><

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