第45話 使えない
「はははは!その程度でのパワーでは私は倒せんぞ!!」
「くっ……」
単純な強さ的に考えれば、決して勝てない相手ではない。
だが馬鹿みたいな再生能力が厄介だ
≪アクアス。奴は再生時にどの程度消耗しているか分かるか?≫
一撃で吹き飛ばせないのなら、消耗戦しかないだろう。
どの程度奴を破壊すれば削り切れるか、俺はアクアスに尋ねた。
精霊である彼女なら、相手のエネルギー量をある程度推し量れる事が出来るはず。
高レベルの鑑定能力があれば、そういった部分も自力で確認できたのだろうが、まあ仕方ない。
そもそも習得リストには郷間のレベル1しかないし。
≪大変申し上げにくいのですが、消耗はないに等しいかと≫
一瞬我が耳を疑う。
あれだけの回復が発生しているのに、消費無しなんて事があり得るのだろうか?
だが、アクアスが嘘を吐くとも思えない
≪恐らく、この
周囲を見渡す。
広大な範囲に、火山とマグマが広がっている。
これら全てが奴のエネルギー源となっているんだとしたら、相当厄介だ。
……不死身だなどとのたまっていたが、どうやらハッタリではなかった様だな。
「どうした?攻撃してこないのか?まあその程度の力では、私を消し去る事は不可能だがな」
俺の一撃に耐えた事で調子に乗ったのか、奴が楽し気に挑発してくる。
調子に乗りやがって。
こうなったらカタストロフを連打で……
――いや、駄目だ。
強力な奥義であるため、どうしても1撃1撃に溜めが必要になる。
あの尋常ならざる速度で回復されたのでは、間に合わない可能性の方が高い。
それにあの技は消耗も大きい。
連打して倒せなければ、取り返しのつかない事になってしまう。
「どうした?使わんのか?聞いているぞ。貴様はあのお方――魔王様の力の猿真似が出来るそうじゃないか」
イフリートが魔王という言葉を口にする。
やはりあの方ってのは、魔王の事の様だ。
しかもさっき、奴は力を貰ったと言っていた。
つまり――魔王は生きている。
しかもどうやってか、この地球のダンジョンに干渉出来る様だ。
イフリートがこの場にいるのがその証拠だろう。
なんなら、クリスタル自体奴の生み出した物の可能性すらある。
だとすれば、奴は6年前からこの世界に干渉していた事になるが……
そう言えば、俺が異世界に召喚されたのも6年前の事だ。
タイミング的には全く同じ。
何か繋がりでも――
いや、そんな事を考えている場合ではない。
今は目の前の敵を倒す事に集中しなければ。
「なんだ。使わんのか?力を出し惜しみするとは、私も随分と舐められたものだな」
「……」
確かにあの力を使えば、こいつを瞬殺するのも訳ないだろう。
だがそうなれば、一緒にやって来た能力者達は……
いや、それだけじゃない。
外で待つ郷間や凛音。
それ以外の人達まで殺してしまう事になる。
――使えるわけがない。
「まあいい。使わぬのなら……お前はここで死ぬだけだ!!」
イフリートが大きく羽搏き、上昇する。
そして炎の矢を放ちながら、頭上から此方に突っ込んで来た。
もはや俺の攻撃を躱す気はないらしい。
不死身の肉体を生かして、防御を捨ててひたすら攻撃を仕掛けるつもりの様だ。
「ちっ!」
炎の矢を捌き、突っ込んで来たイフリートの体を斬り付けた。
だがそれは即座に回復し、奴は軌道を変えて再び突っ込んで来る。
対応は出来る。
だが何とか奴を倒す手を考えなくては、このままではジリ貧だ。
≪マイロード。提案があるのですが、宜しいですか?≫
提案?
それがイフリートを始末する為の有用な手であるのならば、是非聞かせて貰いたい所だ。
≪能力者の持つ、特殊能力を習得されては如何でしょうか?≫
能力者の持つ、特殊能力の取得。
そうアクアスは、俺に提案して来た。
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