廊下
「なんでお前さんをあっさりここに引き入れたのかっていうと……あいつのことを止めてほしいからなんだ。……おれらが何を言っても、あいつは止まらなかった……事前に言っとかないとショックを受けそうだから言っとくが、あいつはそろそろ過労死してもおかしくないくらいに衰弱してる、それでも研究をやめない。多分もう七徹くらいしてるはずだし、前回は職場の奴ら全員で無理矢理気絶させて強制的に休ませた……こういうのがもう随分と続いてる」
廊下を歩きながら眼鏡の男は深刻そうな声でそう言ってきた。
俺はというと、過労死してもおかしくもないという言葉がびっくりするほど響かなかった。
あの女ならそういうことになっていてもおかしくないし。
「……ふーん。そんなふうに熱中できるものが今のあいつにはあるんだ。そりゃあそうだよなあ……俺を殺すためにやりたいことを我慢して無駄な時間を過ごしてきたんだ。そりゃあ過労死しかけけるほどやりたい放題したくなってもおかしくないよね」
そういうと眼鏡の男は立ち止まった、そして一度こちらの顔をまじまじと見た後、深く溜息をついた。
「……あいつが今やっているのはざっくりいうと死者の蘇生の研究だ。まあ蘇生って言うよりも肉の欠片からその人間を複製するみたいなやつだけど……あいつが誰に会いたくてそんなことをしているのかなんて、言わなくてもわかるだろう?」
死者の蘇生。
俺が右手を失ったあの戦いでは多くの人が死んだと聞く。
ならあの戦いで死んだ何者かを生き返らせたいのか?
「あいつの親でも死んだの?」
眼鏡の男は俺の顔を信じられないものを見るような目で見た後、もう一度溜息をついてこう言った。
「うちの頭の悪い天才はそこまで薄情じゃあないよ」
「はあ?」
「お前さん、ほんとに酷い男だな」
呆れかえったような声で眼鏡の男にそう言われても、意味がわからない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます