(3)
Playには必ずしも性的な行為が伴うわけではない。しかし私はパートナー契約を結んだ四人ともと、肉体関係を持っている。
もちろんその中にはアダムとエイブラムも入っている。
アダムは私の最初のPlayの相手だった。学園へ入るにあたり、一度もPlayを経験していないのは、加減を知らないという点で危険だということで斡旋されたSub。それがアダムだった。
アダムに初めて
このとき使ったのは“
その後は一通り基本のCommandを事前に学んだ通りに使い、
SubがこちらのCommandに従った場合はそのあとできちんと褒める。そのセットとコントロールを怠れば、Subは精神不安定となり
幸いにもアダムとのPlayで、彼は
Play前はアダムとはこれ一回きりのつもりではあった。実際に初Play後だって特に次に会うような約束は取り付けなかった。
けれども学園に入って校舎内でアダムを見かけて――なんだかまた彼とPlayがしたくなってしまったのだ。
またアダムが私のCommandに従う姿が見たい。四つん這いになって私の元へうれしそうな顔をして寄ってくる姿が見たい。そうしてできれば目いっぱい褒めてやりたい……。
そのときのアダムがどう思っていたのかは知れないが、再会した彼は容易く私を受け入れてくれた。
「“
そして二度目のPlayで私はアダムと肉体関係を持った。
性行為を指して「食った」「食われた」といささか品のない表現をすることがあるが、私の場合はアダムを「食った」ことになるんだろう。
アダムは童貞だった。私は非処女だった。Dom性とSub性という関係もあって、終始私がリードしていた……ような気がする。
限界にまで高まった支配欲と性欲に理性を吹っ飛ばされて、実のところアダムとの二度目のPlayの後半は、鮮明に思い出すことができないでいる。
After careをしっかりとしなければ! と思って実際に丁寧にCareをしたことだけは覚えている。
それ以外に覚えていることは、私の下で嬌声を上げるアダムに対して、愛おしいという感情があふれたこと。
それからアダムが何度もうわごとのように「きもちいい」と言っていたこと。
Playを終えて欲求が解消されスッキリとしたあとに、「こんなにとろけるみたいに気持ちいいの、忘れられなくなる」とポツリと言われたこと。
その言葉を聞いて勢いでアダムを口説いたこと……。
何度思い出しても私のロクでもなさが際立っているような気がする。
「“
しかもだれもがしていることではないにしても、Play中に性交渉を持つかどうかはあらかじめ契約書で取り決めをしておくというパターンも珍しくないらしい。
それを聞いたとき、「やっちまった」と頭を抱えた。
けれどもアダムとしてはうれしかったらしい。
このDomが少ない世界では、多くのSubたちは抑制剤に頼って暮らしている。Domに支配されたいという欲求を持て余していることが常なのだ。
アダムは思春期に入ってSubとしての欲求が強くなってきた頃合いであった。そこに現れた私は、アダムからすると救世主みたいなものらしかった。
「一歩間違えれば強姦魔みたいなものだと思うんだけど」
「さすがにイヤだったら俺も抵抗するよ。ヒメコはまだよくわからないかもしれないけど、DomがCommandを発してもすべてのSubがひれ伏すなんてことはあり得ないんだよ。確かにSubの特性は厄介だけれど、イヤだったら普通に抵抗するし、最悪Sub dropに陥ってそれどころじゃなくなるよ」
まだ異世界の常識に詳しくない私は「そういうものなのか」と納得はしたものの、しかし本能のままにアダムと交わったことだけはたしかだったので、やはり今思い出すと一連の出来事は恥ずかしいのだった。
アダムとパートナー契約を結んだあと、彼に紹介されたのがエイブラムだった。
説明されるまで気づかなかったのだが、ふたりは二卵性双生児だった。顔立ちはなんとなく共通点があるようなないような……という感じだったので、兄弟だと説明されて腑に落ちた。
アダムの双子の弟であるエイブラムも魔法科に籍を置くSubで、私に紹介した意図はすぐに読めた。
私は私で、複数のSubとパートナーを結ぶことを奨励されている状況であったから、アダムと気心の知れた兄弟であるエイブラムを、ふたり目のパートナーとして受け入れることはやぶさかではなかった。
さすがにエイブラムとお試しPlayをするときは契約書を交わした。ついでにアダムとも今更ながら契約書を作った。
エイブラムはPlay中の性行為はアリ派であった。
エイブラムは第一印象ではアダムに引っ張られている内気なタイプに見えたのだが、いざPlayを始めると意外とワガママなところがあったし、契約書でPlay中の性行為はアリだと書いただけあって、アダムよりも積極的だったのにはおどろいた。
人は見かけによらず。
そんな先人の言葉を噛み締めた一件だった。
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