第12話 ※注※

町中を

ケタタマシイサイレンが

鳴り響く


血だらけの凶器を手に

呆然と立ちすくむ女

女の周りには

血だるまな肉塊が

あちらこちらに

転がっている


何かを口ずさむ女

何を云っているのか

聞き取れない

微かに聞こえた言葉は

この町は狂っている

だと思う


警察官が女を連行し

女の夫が近付こうとしたら

女が暴れだした

あの男は夫ではない

私の夫は

私が殺したのだから

生きているはずはない!

あの男は

いったいダレナノ

私は知らない

あの男が町中を狂わせたんだ


男は

妻は精神を病んでしまい

誰も知らない土地が

妻には良いだろうと

引っ越ししてきたのに

最悪な状況になり

町の人たちには

申し訳ない気持ちですと

警察官に話していた。






男は夫で間違いはなかったのだ

夫が妻を追い詰めるために

知らない男に見えるように

していたのだ

コロサレかけた時は不味いと思った

でも

かえって妻を追い詰めるためには

よかったのだ

妻は段々と

現実と妄想の世界が分からなく

なっていったから

隣の息子などはいないし

町の人のいじめなどなかったのだ

全部夫が仕組んだ罠だったのだ

町の人たちには

妻が精神を病んでいて

ご迷惑をお掛けするかも

しれませんと

予防線を張っていたのだ


これで

夫は悲劇の人となり

一躍有名人だ

取材されテレビに出演し

本を執筆し

映画化され

時の人となり

お金もたっぷり稼ぎ

贅沢の限りを尽くした





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