純粋な

 私の嫉妬と気持ちは時間が経つにつれて、治るどころか、悪化していった。

 彼に対してなにが一番かを考えても、結局は自分が隣にいることが、答えとして出てきてしまう。そんことは、私しか望んでいないのに。

 週に一度の彼と会える授業。私はいつも通り、早くから席について、彼を待っていた。おそらくは、彼はあの女と共に現れるだろう。そう確信していたら違っていて、一人で登場して、席一つ開けて私の隣に座った。私は、彼が何を考えているのか、理解するのに苦しんだ。

 しばらくして気がついた。今日はあの女がいない。私には悪い考えがあった。彼の前で私が傷付けば彼は意識してくれると。私は、その時の為に用意したカッターナイフを授業中に取り出し、自分の左手に刃を向けた。

 私がカッターナイフの刃で左手を傷つけようとした瞬間、彼は自分の手を刃に当ててこう言ってきた。

「それは、絶対にやっちゃいけません。お願いです。なんでそんなことするのですか。」

 彼の声は震えていた。彼の手からは血が流れ始めていたのに、私の心配をしてくれた。というのも彼には、自覚があったらしい。私に対して酷いことしてしまったと。嫉妬させてしまったと。

 私は少し黙り、あなたの気持ちを踏み躙ってしまったことを謝った。そしてあなたの純粋が欲しいことを伝えると、あなたは眼の色を変えた。

「僕はもう純粋では無いのです。とっくの昔に僕の純粋は、犯されてしまったのです。僕は穢れなのです。」

 あなたはそう言ったが私も似たようなものだったよ。

「あなたは穢れなんかじゃない。あなたが穢れなら私も穢れ。でもそれは嫌だから…」

私は続けて言った。

「あなたはこの世で一番儚く、美しく、そして純粋で…私も同じ。一緒にいてあげる。だからお願い。私と一緒にいて…」

 彼が言葉を詰まらせたあと、必死に声を出していった言葉は

「僕からのお願い。こんな僕で良いのなら、これからお願いします。」だった。

 周りの目は攻撃的な目に変わった。

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