嫉妬

 週が明けると私は眼を覚まされた。せっかく、気持ちよく眠っていたのに。わたしはまた目を閉じて眠ろうとした。

 私は彼と旅行に行き、一緒に絶景を見た。あたりには金木犀のような匂いを感じ、彼と見つめ合い、周りの人は私たちを見て、羨ましそうにする。私たちは周りのことなど気にせずに、唇を合わせようとした。その瞬間に目が覚めた。あぁ、夢だ。いつも同じところで夢が覚める。なんだか悲しくなってきた。

 私は起きて、学校に行く準備をした。が、完全に遅刻なので、学校には行かない。行くふりをして、お出かけをしにいった。

 電車に乗り、二駅目で降りて駅前の煌びやかな雑貨屋に身を入れた。香水を買う為に。

 あんまし香水には気を遣わないが、香水を見たくなったのだ。買いたくなったのだ。なんでかは理解できている。彼を意識してしまっているのだ。色んな香水に顔を近づけては、匂いを楽しみ、彼が好きそうな香水を考える。まるで彼が隣にいるかのように香水を手に取り、これはどうかな。とか言ってみる。恥ずかしいけど、なんだか安心する。

 他の雑貨でも試してみる。ティーカップ、お洒落なペン、旅行に必要なキャリーバッグなど。もちろん彼の応えは、最初こそ「いいんじゃないですか?」とか「あなたのセンスは素敵です。」と言った風だったが、なんだか飽きて来たので他の応えを考えてみる。例えば「僕はこっちの方がいいです。」とか「それはありえませんよ。全くですよ。」なんかイライラして来た。

 結局、私は香水を一つ買い満足した。彼の隣にいるべき女性に相応しい匂いの香水にしたのだ。いま、彼の隣にいる女には絶対に似合わない香水。つまり、彼の隣にいるべき女性は私であり、この香水を付けるべきなのは私であるのだ。そういう気持ちが込められている。

 帰りに電車の中の窓を見た。私が映っていた。私は昔になるが、よくその容姿を褒められた。しかし、私は自分の容姿はお世辞にも良いものだとは思わなかったし、自分の容姿に寄ってくる男は嫌いだった。それなのに、なんで彼のことをこんなに意識してしまっているのか考えた。今まで付き合ってきた男たちは、最終的には体の関係を迫って来た。もちろん、私は全部断った。気がつけば、全てが信じられなくなっていた。

 なのに何故彼をこんなにも意識するようになってしまったのか…先日のことが原因かだろうか。わたしは、彼に嫉妬した。でもなんで嫉妬したのだろう。

 答えはすぐに見つかった。彼からは純粋な気持ちを感じたからだ。不純なものは何一つなく、ただ純粋な気持ちを感じたのだ。その純粋な彼の気持ちを踏み躙ったこと、そして他の女に取られたことが、嫉妬の原因だと突き止めた。

 私は家に帰り、彼とのこれからのことを考えることにした。

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