第4話 処刑

 それから何日経ったのだろう。


 私は断頭台の上にいた。

 結局、スグリは助けに来てくれなかった。


 断頭台の周りを民衆が取り囲んでいるのが感じ取れる。

 そこここから、「魔女を殺せ」とか、「悪魔の首を刎ねろ」といった声が聞こえる。


 もしかしたら、この中にスグリはいるのだろうか?

 見つけたくても目が見えない。


 先程、殿下から罵声を浴びせられるが、それをやったのは私ではない。

 無実を訴えたくとも、声が出ない。


「ただいまより、ローズ・ロベリアの刑を執行する」


 私の名前はマリー。そう、ただのマリー、家名などない。

 なぜなら、私は一介の侍女にすぎないから。

 決して、公爵令嬢のローズ・ロベリアではない。


『お嬢様の身代わりとして処刑されるのなんて、まっぴらよ!』


 声が出せれば、そう叫んでいたことだろう。


 今頃お嬢様は遠い国へでも逃げているだろうか?

 それとも、私に成りすまして、公爵家の屋敷でスグリと仲良くしているのだろうか?


 もし、そんなことになっていれば、化けて出てでも二人の仲を引き裂いてやる!

 そして、私を身代わりにした奴らに復讐してやる!!


『生まれ変わってでも、私を身代わりにした奴らに復讐してやる!!』


 そう、誓ったところで、私の首は胴体と離れた。


 転がる私の頭を拾い上げる者がいた。

 涙を流したスグリを期待したが、それは神学者のヘリオットだったようだ。


「兄貴、折角手に入れた魔眼を死体の首に戻してどうするんですか?」

「目的の物ではなかったからな。私には要らない物だ。せめてもの手向けだよ――」


 最後に見た世界は光が溢れていた。


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