3枚目〜皆の笑顔が見たい赤毛の栗鼠〜
巷では女の子がドキドキする一大イベントが迫っている2月10日。まだ雪が残り街がキラキラと光ってるように見える。オーディションは、午後からなのに早く着いたことを後悔しながらも初々しいカップルの様に赤く彩られた近くのショッピングモールを歩く。
時間潰しをするためにと入ったショップには、この前買ったばかりだが買いたくなるおしゃれな服を置いてる店だった。土曜という事もあり高校生も多く見ていて微笑ましく思う。
「このモデルさん話題になったよね!大人っぽくてさ」
声をたどると5人組の女子高生の集団と今売れ出してきたモデルが映るポスターだった。この子たちが言うように、20代前半なのにとても落ち着いているので大人っぽく見える。その光景から目を逸らす様に、今日の服に合うお手頃なアクセサリーを購入し、目的地であるスタジオへ向かう。
今回のオーディションは自分にとって意味のあるものそれ故に何回か来たことのあるスタジオも今日は重々しく感じてしまう。
「お疲れ様です!いよいよ今日だね、調子はどうだい?」
スタジオの待機所に入るとマネージャーが駆け足で寄ってきた。いつも以上に緊張していると伝えると、ホット缶コーヒーを差し出してくれた。周りを見ると最終という事もあり、一般人が見ても群を抜いて「綺麗」「カッコ良い」「可愛い」と言われる人がほとんどだった。しばらく、辺りを見渡してからメイクルームが空いたとマネージャーからあった。
「おはようございます!先輩もこのオーディション出てたんですね!」
「おはよう!事務所違うんだから、先輩って言わなくていいよ。」
午前中にショップで見た高校時代の後輩。彼女もこのオーディションに出るのかと内心複雑になりながらも笑顔を作り応えた。
準備等終わるとそれぞれ、衣装チェックをして出番を待つことになる。この時の胸の高鳴りは、未だに慣れない。「次ですね。頑張ってください」というマネージャーと後輩に行ってくるとだけ伝えてスポットライトの中へ飛び込んだ。
さっきまでの美しい時間が嘘みたいに駅までの道を歩く。オーディションの結果は2日後にマネージャーに連絡がいくので今は、不安しかない。すれ違う人も帰宅するためか、足早に駅へ向かっている。小さい声が聞こえふと横を向くとショーウィンドウを見ている女の子がいた。その子は友達の子に「将来はこんな服を着れるモデルになるの」と暑く語っていた。昔、自分もあったな…この子の願い叶うといいなと思う反面、今の自分は?と誰かに聞かれた感覚になった。モヤモヤしながらも発車時間が
自宅最寄りの駅に着くと葉もない並木道を通る。こちらに着く頃には暗くなりまだ残っているイルミネーションを見て今日は帰ったら久しぶりにカフェに行こうと考える。家に着き、カフェまでの街灯が照らす坂道を進むと涙が誘われる“カオリ”が掠った。
『まだ?まだ思い出してくれないの?』
幼い声が語りかけてきたが、スポットライトの様に照らされてるところで足を止めたが、今は自分しかここには居ない。
『早く思い出して…あなたの笑顔は…きっと…』
今度は途切れ途切れだが、はっきり耳に届いた。声と“カオリ”だけがその場にあった。不思議に思いながらも、寒さが体に伝わってきたのでカフェへ急いだ。
カフェに入りホットカフェモカセットをマスターに注文する。待ってる間今日のオーディションを振り返りながらスマホを弄っていると目を引かれる見たことのないアイコンが画面にあった。時間潰しになればと思いドキドキしながらアプリをタップすると、周りに何もないと錯覚する様な画面の光に自分が包まれていた。
1年後2月14日
今日は後輩と一緒にバレンタインコレクションのモデルをして、笑顔を届けられたと思う。
「こんばんわ〜!菜那です〜!みんなお疲れさま〜!」
笑顔が似合うモデルはバーチャル世界で笑顔にする活動をした。
彼女が世界に笑顔を届けられてることにまだ、少ししか気がついていない…
“皆の笑顔が見たい
〜Who is the next hero?〜
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