2枚目〜澄み渡る朝に清い双睛〜

 花曇り、少し肌寒い3月3日6時頃、窓の外からのヒカリが入り眩しく思い目が覚める。

 何もしたくないよう思いながらも、今日は鍵開けの役なので30分前には職場に行かないといけない。今までは夜勤だったが、4月から早番になり移行期間という事で今月から徐々に早番になっていた。朝はあんまり食べないので軽く朝食の用意をして、着崩した作業服に着替える。


 住み慣れたアパートを出ると隣に住む20代のお姉さんが慌ただしく出かけるところだった。何をしているかはわからないが、いつも忙しいということは分かる。ふと、時計を見るともう歩き出さないといけなかった。住んでるアパート近くに工業団地がありその一つの工場が今の職場である。途中には、桜並木がありこの季節は心が癒される。

「おはようございます!この頃早いですね!」

 声をかけてくれたのは、うちの職場で人気でこの桜並木通りにフレーバージュースの店を構える男の子だ。これから早番だと伝えると、頑張ってくださいねとキラキラした笑顔で言われ心が温かくなりながら職場へ急いだ。


 職場に着くと作業でペアを組んでる後輩が近寄ってきた。

「あれ、今日は俺が鍵開けだからゆっくり来ても良かったのにどうした?」

「先輩が鍵開けついでに何かするかと思い勉強のためにきました」とイケメンに似合う笑顔で言うので、はいはいと宥めながらも心のどこかに靄を感じた。少しボーとするとそれに気がついた後輩から名前を呼ばれたので気を紛らわせて準備に取り掛かる。8時になる頃には、他の仲間も来て仕事に取り掛かる。詰め込みや仕分けがほとんどなので、職場には女性もいて世間話をしながら作業もして良いというアットホームな感じがする。


 チャイムがなる頃、各自休憩を取る事にした。後輩を前から行きたいと言っていたフレーバージュースの店へ連れていく事にした。店に入ると朝にあった男の子と雰囲気は違うが、外見が瓜二つの男性が騒いでた。

「兄貴のばーーか!寝坊すんな!俺の早起きの努力返せ!」

「昨日早めに寝させただろが!こっちは今日寝たんだよ!それくらいしょうがないだろう!」

 喧嘩をしていると思ったが、2人の顔を見て仲がいいのがわかった。彼らが自分たちに気がつき笑顔で席へ案内した。席について自分はいつも頼んでるセットを注文し後輩も同じものを注文した。今日は2人で厨房に入ってる様で息のあった行動をしていた。その風景を見た後輩はすげーと声を漏らし、自分もそう思いつつ目を逸らしたくなってしまった。


 昼も終わり、午後の作業を終わらせて家への帰宅道を進んでいた。風が桜の花びらが運んできた。

『自分らしさに迷い感じているんだろ』

足を止めて、風に乗って聞こえてきた声の方を見てもそこには誰もいない。

空耳だと思いまた、歩き始めると今度は前に嗅いだことのある“カオリ”がした。

『素直になって良いんだよ…君なら…』

同じように振り向いてもそこには風により舞っている“サクラ”だけだった。

数分声のした方を見ていたが、寒さを感じ家に帰宅した。

 帰宅して、後輩からメッセージを確認してると異変に気がつく。全く知らないアプリがそこにはあったが気にせずにその日は就寝した。

 翌朝いつものように準備をしながら、スマホを見るとまだそのアプリがある。時間を見て、余裕があることの確認をし恐る恐るタップした。そこには朝日の様に眩しく光る画面と徐々に飲み込まれていく自分の人差し指が見えた。


 数日後7時頃

今日も準備は万全で余裕がある。

「みんなおはよう!今日も来てくれてありがとうBambinoだよ!」

いつも初々しい猫はバーチャル世界で朝の集いを開き始めた。

彼の自分らしさが生まれたことに気づかずに…


“澄み渡る朝に清い双睛そうせい”と“純粋な初々しい猫”の始まり


 〜Who is the next hero?〜

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