♡美味しすぎないパン屋さん♡

x頭金x

第1話

「ベチャッ」


 通りを歩いていると、頭に何か降ってきた。


「えー、まさか鳥のフン?最悪〜」


 近藤カナデは、空を見上げた。が、そこには何もいなかった。電線もない。これから彼氏とのデートなのに。


 頭に落ちたものがなんなのか確認しようにも触れない。バッグからハンカチを取り出そうとした時にもう一撃だ。


「ベチャッ」


「ウソでしょ!?」


 また空を見上げる。が、そこにはやはり何もいない。


「あーもう!!」


 カナデは近くの『美味しすぎないパン屋』の軒先を借りてバッグからハンカチを取り出して頭を拭った。そこには紫色のドロドロしたヘドロのようなものが付着していた。


「何…これ…」


 カナデが恐怖に慄いていると、またしても


「ベチャッ」


「なんで!?え!?屋根あるのに!!」


 それからしとどに紫色のドロドロがカナデの頭に降り注いだ。


「きゃあああああああああ!!!!!!!」


『美味しすぎないパン屋』の店主が叫びを聞きつけて、美味しすぎないパンを片手に飛び出してきた。


「なんだなんだ!?」


 そして紫色のドロドロに覆い尽くされて蠢くカナデを発見した。




 後日、『美味しすぎないパン屋』で新商品が販売された。食べた人によると


「中に紫色の餡が入っていて、そこそこ美味しいですよ」


 との事です。

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