第4話


桜子とメッセージを交わし始めてから、確実に私を取り囲む環境が変わっていった。



少しずつだけど、確実に。

仕事が増えてきたのだ。



映るかどうかも分からないエキストラから、確実に映る主役の脇へ。



一言しかなかったセリフは文章になり、私にもスポットライトが当たった。



オーディションだって二次、三次へと進むことも多くなり、本役は貰えずとも、別役でのオファーの声がかかったりした。




気が付けば、


「芝居は悪くない」


「だけど華がない」




「だから売れない」




なんて、誰も言わなくなった。





〝私、桜子と連絡取るようになってから、すごい仕事が順調な気がする〟


〝え、そうなの?! やったじゃん!〟


〝桜子はもしや、幸せを授ける天使か何か……?〟


〝何言ってるの(笑) 全部、絢香の実力だよ〟



……私の?



〝絢香がどれだけお芝居好きなのか、私知ってるから。

高校の時からずーっと、暇さえあれば勉強より、舞台とかアニメとかドラマとか。

お芝居のことばかりだったよね〟




そう、だった。




あの頃は純粋に、色んなことが表現できるようになるのが楽しくて仕方なかった。

そして、桜子はいつもそれに反応してくれていたね。



〝……考えなきゃいけないことが多くなりすぎて、きっと少し足踏みしていただけなんだと思うよ。

でも、純粋に楽しんでいた頃を思い出して、そして初心を思い出せたんだよきっと。

だから、私は何もしてないよ〟




こうしてみたい、ああしてみたい。

芝居とは自由で、演者自身が楽しんでこそなのに。


いつからか、周りの目ばかりを気にするようになって。





息苦しかった。



辛かった。




……楽しく、なかった。




こうしなければいけない、ああしなければいけない。

強迫観念に駆られ、ちゃんと楽しめていなかった。




〝ありがとう、桜子〟


〝ふふ、どういたしまして!〟


〝よーし! これからじゃんじゃん頑張って、たっくさん楽しんで、バンバン売れちゃうぞー!!〟


〝それでこそ絢香! 私も負けてられないね、頑張るぞ!〟






青い春。

夕暮れの教室で、お互いの夢を語った。



あの日も、こんな感じで笑いあった気がする。




それは、暖かくて、温かい、幸せな思い出。




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