第4話父親の気配がする

昨年、僕の父は事故でなくなった。まだ、68歳。

夜中に散歩に行き、河川に転落したのである。

毎年、実家には帰っていた。僕1人だったり、家族で帰ったり。

そして、辺りが暗くなれば暗黙の了解で、焼酎を飲むのだ。

他愛のない会話が酒が入れば、盛り上がる。


僕はたまに、父を誘ってはしご酒を楽しんだりしていた。はしご酒は特に父は、はしゃいだ。一軒2000円くらいで、はしごして、はしごする。

〆のスナックでは、父は西郷輝彦の曲を歌っていた。

帰宅するのは、夜中の1時頃であった。


最後になったのは、一昨年前の秋。

牧場に行き、アイスクリームを食べ、山をドライブした。父は元トラックの運転手だったので運転は丁寧かと思えば、飛ばす飛ばす。また、追い越しされたら、激怒する。

最後の晩に、いつもの酒。だが、いつもの酒もほろ苦い。

空港で別れた。別れ際、父は僕にしわくちゃな1万円札を渡した。

僕は、

「ありがとう。また、来年帰ってくるから」と言うと、

「ぼちぼち働けよ」

と、励まされた。

飛行機の窓から、父の姿が見えた。父も僕に気づいたのか、手を振っている。

それが、最期の父の姿であった。

葬式には、コロナで帰れなかったので、父の死を知らされた翌日の晩、涙が溢れ出た。

だが、未だに父は生きているんじゃなかろうか?と、母としゃべっていると気配を感じる時がある。

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