第22話 二人のバカ。−2
ど、どんだけ広いんだ。およそ30分くらい歩いたと思うけど…
先生ってもともとお金持ちだったのか、そういえば前に会った雪原さんもすごくおしゃれして品格があったよな。もしかして…上流階級だったりするのか…?
「はあ…」
「どうしたの?蓮くん…」
「恥ずかしいけど、足が動かない…歩きすぎて。」
「もうちょっとだよー」
「うん。」
いよいよ…入り口まで辿り着いた。
「うん…?あれ?秋泉さん?」
「えっ…?雪原さん?」
あ、そうだ。こっちが先生の実家だったのを忘れていた。
久しぶりに会う雪原さんはなぜか着物を着ている。和風豪邸だからか、変なプレッシャーが感じられるのは気のせいだろう。この家に入ったら先生の両親と顔を合わせるかもしれない…まだそこまで行くには早いと思う。うん…多分。
「へえ…うちの娘に会いに来ました?」
「…は、はい。」
「もう…お母さん。」
「可愛いお客さまですね。」
「…お母さん!蓮くんは私のものだよ!」
「はいはい〜」
そして俺はこの和風豪邸の客室で先生を待っていた。床にカバンを置いて、ほっと一息をついたらすぐ扉を開ける先生が部屋に入ってくる。私服を着物に着替えて、そばに座る先生がさりげなく俺に抱きついてきた。
「へへ…やっとぎゅーができる!」
「着物、着たね。」
「似合う?」
「うん、すっごく。」
「嬉しい…そしてごめんね。」
「謝る必要はないよ…」
先生は俺に抱きついたまま、俺は壁に寄りかかって先生と話した。
「この時を待ち焦がれていたの。」
「なんで…?」
「会いたかったから…」
「そんな人が私を捨てるんですかー?」
「だって…いろいろ言われたし、連絡はしたかったのに…蓮くんが怒るかもしれないから…自信がなくて。」
「怒ったりしないよ…それより電話番号を変えたらちゃんと教えて、手紙に書かれた番号は涙に滲んで何にを書いたのか見分けできないじゃん。」
先生が書いた手紙を見せてあげた。
「あ、そうよね。なんか書いてる時にすごく悲しくて泣いてたの。」
「バカ…」
「でも蓮くんがここに来てくれたから…それでいい。」
「明日は帰るけど、今日だけは一緒にいよう。」
「ここで一緒に住んでもいいよ!」
と、いきなり変なことを言い出した先生にびっくりしてしまった。
「えっ…?先生のご両親に…迷惑をかけるわけ…」
先生と話をしている時、後ろから感じられる人けに振り向く。そこには部屋の中を除いている雪原さんがにやついた顔をして「ふふふ」と笑っていた。両手に何かを持っていた雪原さんはそのまま部屋に入って俺たちの前に座る。
「…ゆ、雪原さん?」
「コホッー!これを秋泉さんに渡すのを忘れてしました。」
「はい…?」
なんかすごい高級感が溢れる封筒をこっちに渡した。
「あ、ありがとうございます。」
その封筒を持ってそばにいる先生をちらっと見たら、先生は笑みを浮かべてこう話してくれた。
「開けてみたら…?」
「えっ?開けてもいい?いや…いいですか?」
「フフッ、私の前で娘にタメ口をしても結構ですよ。」
うわ…なんかすごく恥ずかしい、顔が熱くなる。
「は、はい。」
「開けてみ!」
「うん…開けてみます。」
「はいはい〜」
すごいプレッシャーが感じられる部屋の中で封筒を開けた。中には白い紙みたいなものが入っていて、すぐその紙を出してみたら予想すらできなかったすごいものが入っていたのだ。それは…
『婚姻届』
.....?
俺は何も言えなかった。いや…何を言えばいいのか分からなかった。その一瞬だけ、頭が真っ白になってぼーっと…婚姻届を見つめた後、先生と雪原さんを見た。
「どう!」
「…どうって。」
「いかがでしょうかー?」
確かに俺がその話を出したけど、本格的にこうしてくれるとは思わなかったよ。それより婚姻届ってもともとこうやってもらうものだったのか…?やったことないからよく分からないけど…確かなことは口を開けられないってことだ。
「ねえ…?蓮くん?」
「…」
「緊張しました…?」
「…あ、え…その。」
「うん…?」
「この婚姻届を渡した理由を伺っても…」
びっくりする雪原さんの顔が見えた。
「え?もしかしてなかったことに…?秋泉さんがうちの娘と結婚したいと言われて…」
まじ、本気で渡したってこと?
「あ…それはそうなんですけど…」
何このスピード、ちょっと早すぎでは…?
そうだ。先生が何かを言ってくださ…い…
「へへ…へへ…」
ダメだ。今の先生に話が通じるわけないよな…
「では!これでお互いオッケーってことですね?」
「うん!賛成!」
「…」
「秋泉さんは…?」
何この二人、怖い…
「蓮くん?」
「あ、はい!もちろんです!」
今日は先生に会いに来ただけなんだけど、なぜか雪原さんの前で婚姻届に書いている二人がいた。まだ卒業したばかりの俺とは違って、先生はすごく嬉しい顔で書いている。これはこんな状況で書くものだったのか…と、俺は一人で慌てていた。
まぁ…これでいいんじゃないかな、俺も先生も幸せになるハッピエンディング。
「終わり!」
「はい〜では、夕食を食べに行きましょう。」
「あ、はい!」
一体…なんの状況だ…
そして廊下を歩いている時、小春先生に頼まれたことを思い出した。
「あ、そうだ。さくら、小春先生からの伝言。」
「うん?なになに?」
「さくらは本当にバカって。」
「えー!」
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