第87話 君がいるから。−2
あ、大胆なことをするのはやっぱり恥ずかしい…口元についている生クリームとクレープをもぐもぐ食べている先生。その姿がとても可愛くて目を逸らさなかった。
すると、目を開けた先生がこっちを見つめて俺の口元を舐める。
「はあ…」
「いきなり、何を…」
「口元に生クリームついたよ…」
はあ…もう、ダメだ。先生の顔を見るたびに緊張して気持ちが収まらない…
一口を上げただけで、こんなに動揺するなんて…やはり先生と一緒にいるのが楽しいんだ。そして手に持っているクレープに気づいた俺は先生の唇を拭いてあげた後、その前にクレープを見せる。
「もっと…食べる?」
「…食べたい。」
「よかったよね…座ろうか?」
クレープをくわえて首を縦に振る先生、その手を繋いで隣にあるベンチに座った。
「さくら…」
「うん…?」
俺の膝に座ってクレープを食べる先生が振り向いて首を傾げる。
「そばに座ってもいいじゃん…」
「いや…ここに座りたい…」
「分かったよ。」
小さい先生の背中に頭をつけると、長い髪の毛からいい匂いがして急に抱きしめたい欲求が湧き上がる。
「さくら…後ろから抱きしめてもいい?」
「う、うん…いいよ。」
後ろから先生を抱きしめてクレープを食べている先生に声をかけた。
「さくらは本当に可愛いね…」
「ドキドキした?」
「うん…さくらの背中に伝わる?」
「うん。すっごくドキドキしてる。」
片手で俺と手を重ねる先生が笑みを浮かべてこっちを見る、その時に見えた先生の頬と鼻には生クリームがいっぱいついていた。
「さくら、顔に生クリームがいっぱいついてるよ?」
「そう…?じゃ、舐めて。」
と、言った先生がこっちを向いて目を閉じた。
「ハンカチあるから…」
「舐めて。」
「もう…」
胸元をつついてねだる先生に俺は周りを見回した後、ゆっくり生クリームがあるところに口をつけた。
「ぐ…」
「どうした?」
「ぐすぐったい…」
体をびくびくする先生が両手で肩を掴んだ。
「ばーか、じっとしてまだ残っているから…」
「甘いもの…美味しかった…」
一人で呟く先生の顔をハンカチで拭いてあげると、肩に置いていた先生の手が震えていることに気づいた。俺がそばにいると、先生は甘いものを食べられるのか…それにしても吐き出したりしないから一応ほっとした。
「他のアトラクションに行こうー!」
「うん。」
……
それから心臓を吐き出しそうなローラコースターに乗って冷や汗を流した。すごいスリルを感じた俺の体はいまだに震えている。楽しいけど、ちょっと怖いアトラクションから降りて息を整えると、そばにいる先生がほほ笑んでいた。
「へへ…蓮くん、弱虫…」
「何が…弱虫だよ。自分もくっついてキャー!と叫んだくせに…!」
「私は平気だったよー!」
「へえ…」
「あれ!蓮くん、私!観覧車に乗りたい!」
「うん。」
午後の時間、今観覧車に乗ったら綺麗な夕焼けが見えるかもしれない。二人で観覧車に乗ると、この狭い空間の中で誰にも見られない二人きりの時間ができる。静かで、外から見える素晴らしい景色に二人の距離はもっと縮まる。これはもはやカップルだった。
「ねね、夕焼けが見えるよ!綺麗ー!」
「そうだよね。」
俺の目には先生しか入ってこないんだけどね。先生のキラキラする目が夕焼けを眺めている時、俺は隣で先生の後ろ姿を見つめていた。知っている、ダメって…今は早いって…けど、俺はもう他人に振り回されたくない。先生に告白したい…それだけ。
「さくら…」
「うん…?」
外を眺めていた先生がこっちを見つめる時、体が固まってしまった。本当にそれを言ってもいいのか、言ってもいい立場なのか…いきなり悩み始めた俺の思考が停止する。そしてこっちを見ている先生に何も言えなかった。
「どうしたの…?蓮くん?あ、高いところ苦手だった?」
「いや…なんか、綺麗だから…キスがしたくて…」
「キス…したい…?」
「うん…」
反対側に座っていた先生が俺の膝に座ってあごを持ち上げる。
「いつもはにかむ蓮くんがキスをねだるなんて…珍しいね…」
「いや…やっぱりいい。変なことを言い出してごめん。」
「もう、遅いよ…私がやりたくなったからね。」
「うん…」
観覧車が一番高いところに着いた時、綺麗な夕焼けが照らす観覧車の中で二人はキスをした。抱きしめた体、指先に力を入れて彼女を所有したい気持ちを表す蓮。そして強く抱きしめる蓮と舌を絡み合うさくらも同じことを考えていた。
———先生が欲しい。
———蓮くんが欲しい。
と、二人は考えた。
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