第86話 君がいるから。
今日は先生と俺が出掛ける日、目的地は先生が選んで俺はただついて行くだけだった。海から帰ってきた時、すごく怒られたけどな…なぜか先生は許してくれた。先生にはトラウマになることだったのに、2度とそんなことしないでって先生と約束をしてからデコピンされた。
あの日、先生はすごく怒っているはずだった。もう俺とは会わないと思っていたのに、そんな俺を許してくれた先生を失望させたくなかったから今日は頑張る。
それで今は先生を待っていた。
「お待たせー!」
先生が買ってくれた服を着て、今日は一緒にデートをする予定だ。家から出た先生の服がすごく可愛い…けど、俺の目を引いたのはそのエロい網タイツだった。
「…何それ。」
「うん…?」
「網タイツのことに決まってるんだろう…!」
「どー!」
「何が…どー!だ!」
「網タイツどー!可愛い?」
「エロい…!そんな格好、俺は好きじゃないから…」
「へえ…」
それで階段を降りる時、後ろから俺の腕を掴んだ先生が壁に押し付ける。
「好きじゃない〜と言ったくせに、顔はなんで真っ赤なの?」
「分からない…」
「可愛いね…」
朝からさりげなくキスをする先生に耳まで熱くなってしまった。その感触が気持ちよくてこっちから先生の体を抱きしめようとしたら、体を離れた先生が俺のあごを持ち上げた。
「照れるこの顔をあの女にも見せてあげたいな…」
「…さくらにだけ、見せてあげる顔だから。」
「あら…嬉しい…」
そして頭を撫でる先生について車に乗った。
「ところで今日はどこに行く?」
「夏休みだから…蓮くんといろんな思い出を作りたいと思ってね。」
「へえ…」
「隣の県にある遊園地だよー!」
「あ、そうか!だからペアルックを…!」
「そうだよ。」
一緒に遊園地デート…
こんなに綺麗な先生と一緒にデートをするんだ。想像しただけで顔を赤くなる…そして遊園地に着いた時、すごく派手な建物が俺たちを待っていた。
「行こう行こう!蓮くん!」
「あ、うん…!」
初めてだ。遊園地は…
当然何からすればいいのか分からなかった俺はうじうじして先生のそばにくっつく。それに気づいた先生が手を繋いで話をかけた。
「あれ?蓮くん、遊園地は初めてなの?」
「うん…行ったことない。」
「へえ…じゃあ、これから行こうかな?」
先生が指で指したところには『ホラーアトラクション』と書いていた。
「…」
ちょっと体が固まるけど、それに気にせず俺を連れて行く先生。
「行こう。楽しみだよね?へへ。」
「…うん。」
……
これが4Dギミックシアターってことか…席に座って映画を見る時と同じだった。特に怖くないと思ったら、案外にリアルで少しずつびびってしまう。ちょっとだけ、気合を入れないと…立ち向かうんだ。あの映像と…!
キャー!アァァァー!
いきなり出る化け物にびっくりして体が固まる。そして揺れる席からパッとミストが出た時、思わず先生の方にくっついてしまった。すると、こっちを見て笑う先生が頭を撫でてくれた。なんかすごく恥ずかしいくて顔が真っ赤になっている…
「…」
「怖い…?」
「…怖くはないけど、びっくりした。」
「プッ…それが怖いってことよ。」
「違うって…」
先生は怖がる俺と指を絡ませてそばを守ってくれた。それから何回もびくっとして…そばにいる先生がすごく楽しそうにこっちを見ていた。アトラクションより俺の方をもっと楽しんでるように見えていますが…先生。
「はあ…よかったよねー」
「…どこが?」
「他のアトラクションも行きたい!こっちこっち!」
「あ、うん…走ったら転ぶよ…」
手を繋いで走り出す先生と次のアトラクションに向かう時、いきなり立ち止まる先生がどこかを眺めていた。
「あーん。」
「どー美味い…?」
「うん!甘い!」
あるカップルの彼氏が自分の彼女にクレープを食べさせるのを眺めていた先生がその場に立ち止まっている。先生もそんなことが欲しいんだろう、甘いものが食べたいんだろう。ぼーっとしてそっちを見つめる先生が悲しく見えたから、俺はこっそりイチゴクレープを買ってきた。
「はい。」
「うん?」
「イチゴクレープだよ。」
「…」
やはり心配する目で見てるんだ。
「食べない…?」
「…食べたい。」
「食べてもいいけど…?」
でも、先生はなぜかためらっている。甘いものを食べる時に思い出してしまう昔の記憶、それに悩まされているようだ。どうすれば先生が甘いものを食べられるのか、考えてみた。
「そうか…」
「うん…?」
「さくら、目を閉じてみて。」
「なんで?」
「いいから、早く。」
目を閉じる先生の頭に手を伸ばして撫でる。
「あーんして。」
うじうじしてやっと口を開ける先生、俺はその手をこっそり握ってクレープに乗せいたイチゴをくわえた。生クリームがついているイチゴをくわえたまま、先生の口に向かって甘いものを食べさせる。
「…」
先生の唇に触れた。
舌を使って先生の中にイチゴを押し入れると、びくっとする先生が繋いだ手に力を入れてギューと握りしめる。少し震えている手、口を離れた時の先生はもう生クリームがついたイチゴを食べた後だった。
そうやって俺は先生に一口をあげた。
「どんな味…?」
「イチゴ…味…」
「そう…もっと食べる…?」
「うん…」
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