第84話 39.2度。−2
「はあ…はあ…ここは…」
目が覚めた時の俺は薄暗い部屋の天井を見ていた。玄関に倒れていた俺がどうしてベッドにいるのかはそばで手を繋いでいる先生が教えてくれた。メガネをかけたまま寝落ちした先生が目の前ですやすやと寝ている。そして先より軽くなった体を起こしたら汗で着ていたパジャマが濡れてしまった。
丸一日看病してくれたんだ…なんか涙が出そう。不便そうなメガネを取って隣の椅子に置いたら、俺の服がいつの間にかパジャマになったことに気づいた。
「さくらが脱がしてくれたんだ…なんか、ごめん…」
ふと、首筋につけられた山口のキスマークを思い出してびくっとする。
「やはり、バレるよな…」
それにしても先生をこのままほっておくのはいけないから、ベッドの隣に寝床を作ってあげた。すやすやと寝ている先生を持ち上げてその寝床に寝かせたら、「蓮くん〜」と寝言をする先生がとても可愛かったからしばらくじっとして先生のことを見ていた。
「さくらは可愛いね…」
先生の頭に手を伸ばしてゆっくり撫でる。
「おやすみ…さくら。」
———翌日の朝。
朝なのか…額から感じられる先生の手に目が覚めた。重いまぶたを開けた時、笑みを浮かべて熱を計る先生が俺の顔を触りながら話をかける。
「あら…起こしちゃった…?」
「おはよう…ございます…」
「うん…おはよう。熱は下がったよね。」
「はい…」
「まだ眠い…?」
「ちょっとだけ…」
やっと安心した表情でベッドに座る先生。
「熱があったんだ…」
「そうよ…39.2度だったからすっごく心配したのに…」
「のに…?」
震える手でためらっている先生を見つめていたら、いきなりパッと入ってくる先生の顔がすぐ前にいた。その目が見ているところ、人差し指で首筋を指した先生はムカついた顔で俺を睨む。
「信じられない…これ何…蓮くん浮気?」
「あ、こ、これは誤解だよ…一方的にやられたから…俺の意思なんかいなかったから…」
「はっ…?」
「あの人は怖いから…」
「それは蓮くんが前に言ってた人たち…?だったら行かなくてもいいじゃん…」
「うん…それでも友達だったから仲良く過ごしたかった…でも、こんなことをされるとは…本当に知らなかった。一宮じゃなくて山口だったから…友達ってことを知っていても違うと信じていたから…」
「…」
何を話しても無理だった。
「ごめん…もう話せることはない。俺…あの子と寝ちゃったよ…ごめん…さくら。俺…もうダメだ。」
と、言った時先生の顔は今すぐにでも泣きそうに見えた。馬鹿みたい…本当に、俺がもうちょっと緊張して注意したらこんなことはなかったはずだった。否定できない証拠が体に残っている以上、隠すものじゃなかったから素直に別荘であったことを先生に話した。
「俺はもうダメだ。こんな私が先生を好きになるのは無理です…これからは私のことを忘れて…もっといい人と付き合ったください…ね?」
これは全部人間関係が下手だった俺のせい、普通は難しい…心も難しい…人が一番難しい。いまだに残っている山口の痕と感触が先生との距離感を作っていた。
「…どこまで。」
「うん…?」
「どこまで…やった…?全部やったの…?」
「いいえ…ただ、一緒に寝ただけ…キスされたり、抱きしめられたり…そんなこと。」
何を言ってるんだ。
「…うう。」
俺に前で涙を落としている先生を抱きしめることができなかった。そんな資格なんてもう俺にはいなかったから、これで終わりは決まっていた。短くも長くもなかった二人の時間はこれで終わりにしよう…だから俺は心の底から準備をしていた。
何も残らないって本当に寂しいんだ…先生にはトラウマになるかもしれない。
「気持ちよかった…?」
ふと、聞いてくる先生。
「えっ…?」
「あの子と一緒に寝て、キスして気持ちよかった…?」
泣き声で話しているその姿を見るのがつらい。
「いいえ…私はそこから逃げ出しました。そんなことが気持ちいいわけないでしょう…」
「どこ…?」
「…」
「私は蓮に聞いてるのよ!どこだよ!あの子に触れたところ全部話してよ!!」
俺…最悪だ。
服を脱いで首筋と上半身、キスされたところなどを先生に話した。
「…最悪。」
そう言った先生が俺のあごを持ち上げて山口のキスマークが残っているところに自分のキスマークをつける。後ろに倒されて先生の唇に触れると我慢できない喘ぎ声が漏れてしまった。こんなこと…本当は先生とやりたかった…全部。
前よりきつい、先生は本当に怒ってるんだ…
「はあ…夏休みだから…」
首をめちゃくちゃにする先生にお手上げだった。首筋には先生からつけてもらった真っ赤な痕があちこち残っていて、息ができないほど先生に怒られていた。
山口の痕を全部上書きして自分のことにする先生はその後、俺の唇を舐める。口元をゆっくり舐めてくれる時の感触がとても好きだったから…離れたくなかった。本当に願っていたのは先生とのスキンシップ、口の中に入ってくる先生の舌が暖かくて気持ちいい…涙が出そうだ。
「うっ…うん…」
ゆっくり体を絡み合って俺の上に乗る先生との長いキス、そのとこける感覚は絶対に忘れはしない。生まれてから初めてだ。本当に人が好きだったのは…先生が初めてだったから…ずっと一緒にいたい。
「好きです…ずっと…先生だけです。」
キスを終えた先生の唇が俺から離れる時、涙を流しながら先生に気持ちを伝えた。
「私も好きだよ…蓮くん…」
恋って難しい、でも先生と出会った日から俺が変わっていく気がした…早く大人になりたい。
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