第83話 39.2度。
鳥が鳴き始まる朝に目が覚めてしまった。
ちょっと冷たい朝の空気とそばから感じられる人の温もりに…気持ちいい朝を迎えていた。
『?』
人の温もり…?
ふと、昨日のことを思い出した。確かに昨夜、山口が部屋に入ってきたことを覚えている。それからベッドで襲われてキスされて…そばで寝るって言ってたよな。
なら、今俺のそばで寝ているのは山口ってことか…
そして左側を向いた時、半裸の山口がこっちを向いてすやすやと寝ていた。寝ぼけて俺の左腕に胸を押しつける山口、びっくりした俺は先に体を起こして部屋の中を眺めた。すると、かけた布団の上に散らかったいる二人の服と下着に気づいた。
「これ…半裸じゃなくて全裸だったのか…俺は今全裸の女の子と一晩を過ごしたのか…しかも、山口と…」
と、思ってたら俺もいつの間にか一糸もまとわない姿になってしまった。
「…」
「おはよう…蓮くん。」
下半身を確認してる時に起きた山口がこっちを向いて顔を赤める。腰までかけられた布団から見える白い肌と一糸もまとわない体、目が覚めた山口が俺を意識して片腕で胸を隠した。
「何もしないって約束したんじゃなかったのか…」
「え…なんの約束かな…?」
「なんで裸になってるんだ…」
「私の目を見てから話して。」
「そんなことできるわけないだろう…山口なんとか着ろ。」
その体は見たくなかったから目を逸らして服を着る。すると、後ろから肩を引っ張った山口がまた俺を倒してキスをした。山口にどれだけやられたのか…俺の体には数えられないほどの感触が残っていた。
そしてこんなことすら辞めさせない自分が憎い。
「私の目を見て。」
「…うん。」
「まだ…話が終わってないから…」
「と、言いながらなんで首をな…める…」
「蓮くんの反応が好きだから…」
まるで奴隷みたいな気分だ。抗えないし…何一つ口に出せるのができない状態、見えないところから恐怖が襲ってくる。
「朝だから、ここまでにしようね。」
「…うん。」
床に落ちている服を拾う山口は俺の耳元でこう囁いた。
「また…気持ちいいことしようね…」
いつまでこうやってやられっぱなしの人生を生きるのか、ただ人として見てほしかった。そう、今はっきり言わないと先生が遠く行ってしまうかもしれない。俺の居場所は先生のそば、これはただのいたずらだ…惑わされず痛みを乗り越えて前に進め…それだけだ、蓮。
「いや、俺好きな人いるから…そんなことは彼氏とした方がいい。」
「…どうして、そんなことを言うの…?」
部屋を出る山口が振り向いて話した。
「えっ…?だって、これは普通じゃないから…昨日と今のことは忘れるからさ。もうこれで終わらせよう…山口。もういいんだ。もう…本当にいいんだ…俺のことをほっといてくれないか…」
「なんで…そんなことを言うの…なんで、なんで、なんでだよ…!」
「山口の気持ちは分かっている、分かっているけど…俺が好きな人は俺が決めたい…それだけだ。」
「…」
頭が痛くなった。もともと、こんな話をするほど勇気がある人じゃないから…でもほっといたら身も心もボロボロになってしまう。俺はただそばにいる先生と恋をして、みんなといい友達関係を築き上げたい…そんなことも許されないのか。
ふと、いじめられた過去の記憶が蘇る。
「俺、先に帰るから…ごめん。いいとこを邪魔して…みんなといい夏休みを…送って…」
「ちょっ…と、蓮くん!」
そう言って別荘から逃げ出した俺はほぼ1時間くらい走っていた。冷たい朝の空気に冷えた体は俺の無茶振りにますます疲れていく。それに関わらず、ずっと走っていたらいつの間にかバス乗り場に着いていた。
「振り切れない…」
何度も忘れようとしたのに…また心の底にそれを積み上げていた。そしてちょうどいいタイミングに着いたバスに乗って家に帰る。
「フウ…」
嫌なことはもう思い出したくない…だから仲良くしたかっただけなのに、なんで俺は何をしても上手くできないんだ。馬鹿みたいに怖がって、逃げて…そしてちょろい…先生に何を言われても答えられない状況だった。
「…体が重い。」
もう10時になって、ますます上がる気温に体が耐えられなかった。そして冷えてしまった体のせいで、頭まで痛くなってきた。息を切らしてバスから降りた後、冷え汗を流している自分の調子が悪くなったことに気づいてすぐ家に入る。
「はあ…はあ…」
少し眩暈をしていた…前がぼんやりして体が震える。スマホを出して先生に電話をかけようとしたら、自分の足につまずいて床に倒れてしまった。
目の前で転がるスマホ。そして最後に見えたのは先生の携帯に発信するスマホの画面、先生が電話に出た時はもう気を失ってしまった後だった。
「…蓮くん?」
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