第72話 二人で出かけよう。−2

「お昼は何にしようかなー」

「行きたいところありますか?」

「うん!イタリアンレストラン!」

「はい、じゃそれにしましょう。」


 お会計を終わらせて先生と隣のイタリアンレストランに向かった。先生が車を出してくれる時、ネットでいいイタリアンレストランを調べてみたら遠くないところにいい店があった。先生はパスタとか好きだよな、もぐもぐ食べるのも可愛いし。


「乗ってー!」

「はい。」

「見回ってみようか?」

「調べておいた。こっちどー?」


 調べておいた店のホームページを先生に見せて目的地が決まる。


「いいね!そっちにしよう。」

「うん。あ、そう…さくら、先何を買った?」

「う、うん?」

「なんか買ったじゃん…?」


 確かに、お会計する前に何かを持ってきたはずだけど…気のせいかな。教えてくれないと、余計に気になるじゃない…


「秘密だよー」

「え…」

「フフッ。」


 ……


 イタリアンレストランに着いた二人は注文をして話を続ける。


「でもね…やはり仕事はしたくない。一緒に海に行きたいー!」

「またそれですか?」

「だって…蓮くん他の女の水着を見て顔を赤めるから…それが嫌なの!」

「…しません!」

「ほ〜んとうに…?」


 こっちを睨む先生の拗ねた顔、その耳元でひそひそと話した。


「さくらだけだよ…」

「…えっ。」

「恥ずかしいことを言わせないで…」

「へへへ…もっと言わせたい。」


 そう言ってあげると、すぐニヤニヤする先生が可愛い。


 そして店員さんが料理を持ってきて一緒にお昼を食べる。俺が先生と過ごした時間の中で分かったこと、先生はイタリアン料理が好きだ。前にもこうやってイタリアンレストランに行ったことがあるから、そん時もけっこう楽しそうな顔をしてたよな。


「美味しい…」


 今も前でもぐもぐと食べているその姿が好き。先生と一緒に食事をする時、俺にだけ見せてくれる癖がある。先生が美味しいものを食べる時はいつも俺を見て食べるんだ…目を合わせて自分の笑顔を見せてくれること。見ている人も幸せになるあの笑顔に、お腹がもういっぱいになる気がした。


 この笑顔を守りたい、しかし本当に24歳か…可愛しぎてもう女子高生に見える。そしてふと、先生の頬にパスタのソースがついていることを見て笑いが出てしまった。本当に大人ですか…先生可愛すぎる。俺が笑っている意味も知らず、首を傾げてもぐもぐと食べている先生…最高だ。


「もう、雪原さん…子供ですか…?」

「うん…?なに?」


 俺はさりげなく先生の頬を親指で拭いた後、ソースがついた指を口に入れた。すると、こっちを見ていた先生の反応が面白くなっている。慌てて、うじうじしながら…しばらくぼーっとして、フォークを握っていた先生が顔を赤めて俯いた。


「そんなこと…急にやっちゃダメ…」


 きっと彼女ができたらこんな感じになるよな…


「なんで…?」

「なんか…胸がワクワクするから…」

「こっちも同じですよードキドキしながらやってます。」

「…本当に、彼氏みたい。」


 小さい声で言うさくら、その声は蓮に聞こえなかった。


「お腹いっぱい!ごちそうさまでした!」

「よかったですね。」


 食事を終わらせてから車まで歩いて行く時、俺と腕を組む先生がそばにくっついて声をかけてくれた。


「私たち、他の人にどー見えるかな?」

「恋人に見えるかも…」

「ね、蓮くん。」

「うん。」

「大人になった蓮くんは私が仕事を終わらせて家に帰ったら、おかえりって言ってくれるかな…?」

「うん。」


 うん…?今、なんって…?

 車の中で顔を赤めた先生がハンドルに頭を乗せた。


「先のように、私の面倒を見てくれるかな…?」

「…うん。」

「好き…」


 そう言った先生が俺の手を引っ張ってキスをした。先生は積極的だ…でも、何一つ焦ることはないのに、先生のスキンシップから焦ってる気持ちが伝わる。俺はそれに気づいてもただ、先生のいい匂いと柔らかい感触に身を任せてその時を心の中に刻むだけだ。


 これから先生が焦らないように俺が頑張るだけだ。


「さくら…最近キスとか…やりすぎ…」


 いつの間にか、先生のキスがますます激しくなっていた。


「ずっとやりたい…蓮くんだから…」


 息を切らしてこっちを見つめていた先生の顔が真っ赤だ。どれだけ、やりたかったんだ…もう頭の中が先生にいっぱいでどうしようもない。高校生には我慢できないことだから…勘弁してください…


「ハンカチあるからこっちきて。」


 ほほ笑む顔で口を拭いてくれた先生が下で指を絡ませる。

 その間、落ち着くために俺は下を向いて目を閉じる。ドキドキする気持ちを抑えている時、エンジンをかける先生が話した。


「今日…今日も、一緒に寝よう…?」

「うん…さくらがそうしたいなら。」

「うん!今帰って昼寝しよう!」

「えっ?そっち?」


 と、我慢しようとしたくせに先生と寝ることは諦めなかった。馬鹿馬鹿しい…

 その時、俺は忘れていたことを思い出してしまった。


 ———8月1日、それは先生の誕生日だった。

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