第71話 二人で出かけよう。
———週末、二人は大型ショッピングモールに行く。
一人でショッピングするつもりだったけど、先生がついてきてしまった。夏服は自分が選んであげるって言われたし…そして先生は隣の県にある大型ショッピングモールまで車を出してくれた。
「あ…私も一緒に行きたいな…海。」
「仕方ないよ…学校の仕事が忙しいから…」
「え…私も高校生になりたい。」
「…馬鹿。」
「ね、高校生になったら蓮くんといろんなことができるんでしょう…?へへへ…」
運転席から変な笑顔を見せる先生が怖くなってきた。
「でも、夏祭り。その日は絶対…一緒に行くから。」
「うん。」
「うん!楽しみだね!」
期待していた。
先生と一緒に夏祭りに行くこと、そして花火を見ること。
「そう言えば、もう本格的な夏になったな…」
「夏…蓮くんと過ごす夏は初めてだよね…?」
「そうだよね…普段は小春先生とどっかに行くんじゃない?」
「うん…でも小春は彼氏いるから、一緒に遊ぶのは滅多にないよね。」
「俺も友達いないから…理解できる。一人の夏は…」
「友達はいなくても…私がいるじゃん。へへ。」
「いきなり、そう言われたら恥ずかしくなる…!」
先生と話していたらいつの間にか目的地に着いていた。
さすが、大型ショッピングモールって広いな…目をどこに置けばいいのか分からない。俺は先に入って駐車場から出る先生を待っていた。すると、目をキラキラしてショッピングモールに入る先生が隣のベンチに座る。
「来たよー」
「行きましょうか…?」
「へえ…外は敬語になるんだ…」
「タメ口じゃ…おかしいし。」
「そうよね。あ!蓮くん、手を繋ぐことと…腕を組むこと、どっちが好き?」
「…普通に歩きたいんです。」
「選んで。」
「どっちかって言うと…手を繋ぐこと?」
「うん!分かった!」
と、言ったはずなのに…腕を組むのはどういうことですか。
そして二人は腕を組んでショッピングモールの中を歩く。
わざわざ隣の県まで来たのは自由にくっつきたい先生の望みだったかもしれない。やはり、こうするのが一番いいよな。楽だし…
「一緒に夏服を買おうね?」
「はい。」
すごく楽しそうな顔をしている先生、こんな時は女子高生に見える。
そして夏服の売り場にきてシャツとズボンを見ていたら、先生がどっかで服をいっぱい持ってきて着替え室に向かった。
「いっぱい持ってきたよ!着てみて!」
「え…そんなに?てか、雪原さん…?」
なんで同じ着替え室に入るんですか…?うん…?
「ペアルックしたいから…」
あ、そうか。この量は先生と俺の分だったのか、そしてペアルックってなに…本当にカップル見たいじゃない。落ち着かないこの気持ちをようやく堪えた。
そして手を伸ばす先生がさりげなく俺のシャツを脱がしていた。先生の手が腹に触れた時、びくっとした俺はその手を掴んでしまった。目を合わせたら先生も顔を赤めて、びくっとする。本当…二人とも何をしているんだよ…
「あっ…一人でできますから…」
「脱いでみて…早く、早く。」
「出てください…!恥ずかしいです。」
「はい、つまんな〜い!じゃあ、私も隣で着替えるからね。」
言わなかったら…一緒に着替えるつもりだった…?
「はい…」
黒いTシャツと灰色のズボンか、カジュアル風もいいよな。
「開けるね。」
「あ、はい。」
着替え終えた先生がカーテンを開ける。
小さい体にピッタリ合うSサイズのTシャツと脚が長く見えるミニスカートを着ている先生が目の前に立っていた。うわ…すごい美人、思わず先生の胸が目を惹く…スーツを着た時も知っていたけど、先生のボディーラインがはすごく綺麗だった。
「キャー!カッコいい!!」
「雪原さん…綺麗です。」
「他の服も着てみて!早く!」
「は、はい。」
次の服は白いTシャツにデニムパンツ。
夏っぽい感じがする、先生服を選ぶセンスがある…
「開けるね!」
先生、着替えるのが速すぎ…それより、こっちを見てキラキラするその目はどうかしてください。
「これもカッコいい!」
同じTシャツにデニムスカートか…可愛い、両手を頭の上に上げてVサインを作る先生の破壊力。先のはクールな感じがしたけど、この服は本当に可愛い感じがして先生は何を着ても似合う人だな。と思ってしまう。
「どー?可愛いでしょう!」
「はい。本当に可愛い…」
隣で待っていた女子店員がすごくムカついた表情で二人を見つめている。多分、「私も彼氏とイチャイチャしたい」って思っている顔だった。すごくお似合いの二人を見つめていた女子店員の涙が頬を伝う。
「…」
元の服に着替えて先生を待っていたら、着替え終えた先生が俺の頭に帽子を被せる。いきなり帽子を被せてくれて、目を開けたら先生も同じ帽子を被っていた。そして髪を整えて再びチェックする先生が満足した顔で一緒に写真を撮る。
「可愛い!この写真すぐ送るね!」
「は、はい。」
いきなり写真を撮られてびっくりしたけど、これもこれなりに楽しい。
恋人…みたいだ。
「カッコいい。これ買ってあげるから、蓮くんがお昼を買ってくれない?」
「え…?いいですけど、高いですよ…?」
「プレゼントする!ただし、一緒に私と出かける時だけだよ?分かった?」
「はい、ありがとうございます!」
笑いながら着替え室を出る蓮とさくら、それを見ていた店員が一人でこう呟く。
「明日、世界が滅んだらいいな…」
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