第70話 同居ですか。

「起きて…朝だよ。」

「もうちょっと…5分だけ…」

「ダーメ!」


 耳元から聞こえる先生の声、週末の朝はそうやって始まる。寝坊してようやく目が覚めた時、俺の前には下着姿の先生が目をパチパチしてこっちを見つめていた。昨日何があったのか、なんで先生が脱いでいる…?それと、俺も半裸の姿で寝ていた。


「え…」

「あ、蓮くん。起きたー」

「え…なんで…」

「どうしたの?」

「服を着て…」

「うん…?」


 ゆっくり俺の体に乗る先生が目を揉みながら腕を伸ばした。ずり落ちるブラの肩紐に顔を赤めて先生から目を逸らすと、それに気づいた先生がわざわざ肌を見せつけるように目を合わせてくれた。


「…っ。」


 日差しが差し込む明るい部屋で先生の肌がもっと輝いている。白い肌と黒色の下着がとてもエロくて、頭の中がめちゃくちゃになってしまう。でも、俺とは違って先生はそれを楽しんでいるように見えた。


 俺の上に布団がその上に先生がいて、目を逸らすことしかできなかった。じっとしていたら、先生の体に押さえられて布団の中から出られない…これは何かを欲しがっている先生の合図、俺には分かる。


「へへ…」

「何が欲しい…?」

「蓮くんがチューしてくれたら退いてあげる!」

「朝から変なことを…」

「変じゃないよー恋人同士なら普通だよ?」


 告ったこともないのに…もはや先生とそんな関係になってしまった。別に嫌いじゃないけど、なんか…恥ずかしくてはっきり言えない俺だった。でも、こうやって同じベッドで寝た以上その関係を認めるしかないんだよな。


 もう4日間か…先生と一緒に寝た。どうしよう…一緒に寝るのが気持ちよくて家に帰りたくない。夜になったら先生にめちゃくちゃやられるけど、エロいことをするより先生と一緒にくっついている時間に癒やされるのが好きだった。


 先生は首輪をつけたり体を触ったりするけど…俺は先生が欲しがることならベッドの上でなんでも合わせたあげた。去年からずっとそうやってきたからなんとなく我慢できるけど、ますます大きくなる好きって言う感情が俺の壁を壊そうとしている。


「無理…さくらが上にいるから届かないよ。」

「これならできるよねー?」


 すぐ前まで先生の顔が…近づいてくる。

 長いまつ毛とサラサラする髪…そしてピンク色の唇が見える。少しためらっていた俺は両手で先生の顔を触って、その唇に軽いキスをした。


「えーっ!朝から…!」

「え…?」

「頬に…!ほお!」

「あっ…!間違えた…!」

「もう、朝から何をするのよ!」


 顔を赤めて慌てる先生が両手で俺の胸を叩いていた。そして退いてくれた先生がそばに座って俺を睨む、お気に召さないような顔がとても可愛い。すぐ起きて腕を伸ばしたら昨日の痕跡が体に残っていた。


 でも、今はそれより…


「服!着て!」

「何ー?興奮したの…?」

「うるさい…!」


 変なことを言い出す先生に布団をかけてあげた。

 そして床に落ちているシャツを着ると、こっちをジロジロ見ている先生が声をかけてくれた。


「ね、蓮くん…」

「うん?」

「蓮くんはなんで何もしてこない…?」

「何が…?」

「一緒に家にいる時とか…寝てる時とか…なんで何もしてこない…?」

「…」

「いつも、こっちから仕掛けてるし…蓮くんは私が言わないとやってくれないじゃん。」

「でも、手を繋いだり…抱きしめたりするから。そして今も…」

「そんなことじゃなくて…」

「あ…」


 言ってる意味がなんとなく伝わった。


 先生は俺から何かをしてほしかった…?てっきり、嫌がってると思っていた。だから手を繋いだり、抱きしめたり…それ以上のことは先生に許可を得てからだった。あの日、先生と話した時のことを忘れはしない。


 ———だって先生、それ以上のスキンシップは嫌がってたじゃん。


「いいよ…さくらのことは分かっているから、無理しなくても…」

「好きだよ。やりたい…愛されたいのよ。もっと触って!」

「…さくら。」


 俺と同じ顔して、俺と同じ気持ちを持っている。二人とも馬鹿馬鹿しい…素直にならないのは半年が経っても同じってことか、でも俺たちあの時よりはちょっとだけ…強くなったかもしれない。


「何かしてほしいのは…こんなこともさくらに許されるってことかな…?」


 布団をかけている先生の胸を触る。


「は…っ!」

「怖い…?」

「…」

「男の方から体を触ること…まだ怖い…?さくら、目を開けてこっちを見て。」


 何も言えないさくら、目を閉じて我慢している姿を見つめていた蓮がブラの中に手を入れる。暖かい蓮の手に触れているさくらが壁に寄りかかって顔を赤める、言葉が出ないままずっと蓮に触れていた。


「やはり…辞める。こんなことしたくない…嫌な思いをさせるだけだよ。」

「…えっ?」

「いきなり胸とか触ってごめん…」

「嫌…じゃない…よ。」

「嫌じゃなかったら涙を流さないで…さくらは笑顔が一番綺麗だから…」


 頬を伝うその涙を拭いてあげた。


「違う…嬉しくて出る涙だよ…」


 そしてすぐ俺に抱きつく先生が笑みを浮かべた。先生も先生なりに昔のトラウマを克服してきたのか、だから最近…積極的に仕掛けてきたんだ。

 ぼーっとして抱きついてる時、先生の下着姿にまた顔が真っ赤になる。あ、いけない…胸を触った手から先生の感触を意識してしまった。


「蓮くん、蓮くん!」

「うん。」

「今日から同居しよっか?」

「さくらがそうしたいなら…それに従う。」

「うん!」

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