第73話 千切れた紙。
なんで忘れていたんだろう…先生の誕生日。あ、それか。本当に24歳か、って思ってた時か…?ピンときたのは。
先に起きた俺は隣で寝ている先生の顔を見つめながら頭を撫でてあげた。無防備な姿、パジャマを着ても起きた時には下着姿になる二人。多分、俺が寝た後に先生一人で忙しかったかもしれない…また体にキスマークをつけてすやすやと寝ている。
「ううん…朝なの…?」
「うん、おはよう…さくら。」
「あっ!」
くっついて寝てた先生が俺を見てびくっとした。
「なんか、彼氏みたいでちょっと…ドキドキしちゃった…!」
「何それ…可愛い。」
「なでなでして…まだ眠いんだよ…」
「はいはい。」
朝5時40分、ちょっと早起きした二人の時間。ボタンが外れたパジャマの中から見える先生の白い肌と赤色のブラ、さりげなく恥ずかしいところまで見せる先生は俺にだけその姿を許していた。
「安心する…蓮くんの手。」
「だから、服を着て…学校に行く準備をしないとね。」
「は〜い。」
毎朝、こうやって…まるで夫婦みたいに起きるのが朝ルーチンになってしまった。
……
なんとなくこなした一日、ほぼ終わっていく授業。
そろそろ学校が終わる前、白川にL○NEを送らないと…聞きたいことがあるから。
「あ…やはり寝不足か…」
俺は机に突っ伏して目を閉じていた。夜の先生が積極的に仕掛けてるから…寝る時間が減ってしまう、そしてまだその感触が体に残ってるみたいで顔を赤めていた。
もう先生の罠に嵌まって…嵌まって…うう、恥ずかしい。
「蓮?寝てんのか?」
「あ、うん…ちょっと寝不足。どうした。」
朝陽、久しぶりに話をかけられたな。
「それが…相談があってさ。」
「そうか…ここじゃダメか?」
「うん…」
「屋上でも行く…?」
「行こう。」
相談ってなんだろう。
こいつ去年も悩みとかなさそうに見えたけど…珍しいな。あの朝陽も悩んでることがあるのか。
「蓮、俺さ。香奈ちゃんと別れそうだ。」
「は?」
「事実だぞ。」
「どうした。喧嘩でもした?」
顔色が悪い…本当に何かを悩んでいるんだこいつは。
「喧嘩…って言うものか、いきなり嫌われた気がして俺にもよく分からない。」
「いきなり…?」
「この最近、俺たちの間に何の話もなかったんだろう?」
「そうだけど。」
「もうお前も知ってると思う、山口がお前のことを好きってことは。」
「うん。知ってるさ。」
「だから、香奈ちゃんに言ってた。そこまでにしてもこんな結果なら、蓮も別に興味ないんじゃないのかって…ただそれだけ。」
「…」
「確かに山口は美少女だ。蓮もそんな可愛い子と付き合って、俺も4人で遊ぶことになったらいいと思った。でも、ある日…俺たちがやってることに蓮の意志が入っていないことに気づいたんだ。」
朝陽…俺は鈍感って言われても、実は興味がなかったんだ。お前らと4人で遊ぶのは好きだけどさ、それ以上にはならない。ただの友達だろう…気づいたのが遅くなったかもしれないけど、お前らが俺にとって大切なこのは変わらない。
ただ友達としてだ。
「そうか…山口はいい子だろう。でもさ、俺には惜しい子だ。きっと山口にはもっといい人が似合うんだぞ…朝陽、もし今田と和解したら伝えてくれ。俺には好きな人がいるって。」
「そうか…!蓮、好きな人がいたのか…なんか悪いな…」
「気にしなくてもいい。だから、その気持ちには応えられない。」
「俺も…去年のようにお前と二人でゲームとかしたり、普通の学校生活が送りたいな…」
「今でも…できるんだろう。それと今田のことはどうする気だ。」
「正直、彼女がいるのは楽しい…ドキドキするし、でもいつの間にか…その気持ちがますます変わっていく気がした。今田は本当に俺のことが好きなのか…なんか他のことに縛り付けられているような気がする。」
こうなったら…あの約束はどうなるんだ。いつもより少し真剣な顔で話している朝陽、やはり二人の間に何かあったと思う。じゃあ…俺は何を言ってあげればいい…?
「…」
「海、どうする気だ。蓮。」
「あ、あの約束か…俺さ、白川たちと行くことになった。」
「そうか…」
「お前はどうしたいんだ。今田と別れそうだったら行く必要があるのか?」
「…分からない、ちょっと疲れた。」
「じゃあ、この話はここまでにしよう。」
「うん…」
「朝陽、お前はいいやつだ。よく考えて…決めろ。また何かあったら話し相手くらいはやってあげるから。」
「ありがとう。」
そう言えば、白川に相談したいことがあった。もう先生の誕生日だから女性はどんなプレゼント好きなのか聞くためにL○NEを送ったけど、でも忙しいのかな…
まだ返事が来なかった。
———帰り道の白川。
「あ、そうだ。蓮くんのL○NEに返事するの忘れた…!」
道を歩きながら返事を打っている時、人影が白川の前に立ち塞がる。
「あっ!すみません…」
「ハロー白川さん。」
「…一宮美那?」
「ちょっと、話があるんだけど…いい?」
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