第64話 邪魔。−2
「ううん…」
授業が始まってもなかなか集中できないみゆき、シャーペンを握って教科書に書く3文字「秋泉蓮」。そして再び机に伏せる、自分の髪の毛を触りながら壁にかかっている時計を見つめて、ただ時間が経つのを待っていた。
「だるい…」
ぼーっとして廊下の方を見つめていたら、ちょうど4組に向かっているさくらの姿が見えた。ふと、その後ろ姿から思いつくあの日の疑問。頬杖をついてさくらの姿を見つめていたみゆきは考えていた。
「そう言えば…前、蓮くんと歩いてた女の子は誰だったのかな…」
あの女の子と…ちょっと似ているような気がする。そんなことあるわけないのに…でも、雪原先生のあの雰囲気が…そしてその後ろ姿がちょっと似ているような、そうでもないような。あ…本当に美人で羨ましい…そんな魅力的な女性になりたい。
そんな美人になったら蓮くんも私に甘えてくるのかな…
「フン…」
あの時の蓮くん、楽しそうに見えた。隣の女は同じ学校の先輩?後輩?あるいは他学校…?見たこともないスタイルだったから…よく分からない。あの人は誰…?
「あ…気になる…誰…?」
悩みながら机に伏せる時、肘に当たった消しゴムが床まで転がってしまった。いちいちめんどくさいことばっかりでため息をついたら、隣席の男子が落ちた消しゴムを拾って話をかけてきた。
「これ、落としました。」
「あ、ありがとう…えーと…」
「
「あ、うん…岩田くん、ありがとう…」
何…そのいやらしい顔は、不愉快。
ちょっと笑ってあげただけで、そんな顔になるんだ…男って単純だよね。
「あの、山口さんって今日時間空いてますか?」
「うん…?なんでそんなことを聞くの…?」
「えっと…ちょっと話がしたいって言うか…」
「うん…約束があるけど、ちょっとだけならいいかも。」
「本当ですか!ありがとうございます!じゃあ、放課後音楽室で待っています。」
「え…うん!」
やはりそうなるよね…はいはい。どうせ、ずっと前から好きでしたとかでしょう…?ほら…何もしなくても男たちは寄ってくるんだよ。私は…特別なのよ。
「やったー!」
と、友達と盛り上がる岩田。
興味ない…
でも、どんなに笑ってあげても…蓮くんは私を見てくれない、なんで…?私、大人しくして蓮くんのそばにいるのに…私、可愛くない?なんで見てくれないの…?分からない、何が問題なのよ!何が…
ただ作り笑いをする。
そして休みの時間、私はすぐ蓮くんがいる教室に行った。少しでも蓮くんの顔が見たくて教室の中を見回したら、なぜか蓮くんはどっかに行っちゃったようだ。香奈ちゃんと山岸くんだけが残っている教室、私は香奈ちゃんに蓮くんのことを聞いた。
「あの…秋泉くんは…?」
「あ、それね。白川とどっかに行っちゃったんだ。ごめんな、山口。」
「そ、そうなんだ…分かった。じゃあ、後でくるね…」
「あのね!みゆきちゃん!」
教室を出る時に声を上げる香奈ちゃん。
「う、うん!どうしたの?香奈ちゃん。」
「放課後時間空いてる?」
「放課後…」
ちょうど、先のことを思い出したみゆきは笑みを浮かべて香奈の話に答える。
「うん。今日は時間ある!でも…音楽室にちょっと用事があって…遅くなるかもしれない、ごめん。」
「こっちから音楽室まではそんなに遠くないから放課後迎えに行くね!」
「本当…?」
「うん!」
「ありがとう…香奈ちゃんは天使…」
そして隣の山岸くんを睨んでこう話す。
「山岸くん、もっと頑張って…!」
「え…?俺?え…」
「私が香奈ちゃんと付き合ってもいい…?」
「え?!それはちょっと…」
「冗談だよ…へへ。」
「もう…みゆきちゃんったら。」
蓮くん、今はここにいないってことだよね。がっかり…
「じゃあ、後でね!」
「うん!」
……
あの口喧嘩があってから蓮くんと会えなかった。白川結菜…もしかしてあの子が連れて行ったのかな、普段だったら仲良く4人で遊んだりする時間だったのに。白川、どこまで私の邪魔をするつもりなの…?
そして放課後。焦るみゆきが教室を出ようとしたら、その前へ立ち塞がる岩田。
「い、岩田くん…?いきなり…びっくりした…」
「今、あの、放課後だから、音楽室で…」
「あ…」
あ、そんな話もあったよね…
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます