第52話 悩みは。
「白川…何を…」
「じっとしてて。」
長い沈黙、お互い何から話せばいいのか分からなかった。
静寂が流れているこの場所、こっちを見つめている3人の顔はショックを受けたままだった。すると、くっついている白川がそれに意識して俺に話をかけてきた。
「蓮くん、戻ろう。」
「分かった。」
何かに喜んでいるその顔、俺たちは3人がいるところまで歩いた。
「ごめん、話が長かった。」
「れ、蓮。」
「うん。」
「えーと、二人の関係は…?」
「あー!見られたら仕方ないよね?蓮くん!」
「なんでもない、気にしなくてもいい。朝陽。」
そう言ってから人たちがいるところに足を運んだ。
そう、余計なことは言わないことにした。どうせ、この3人とは関係ない話だから適当に誤魔化すだけだった。でも3人を通り過ぎる時、朝陽はともかく今田と山口の顔色が気になるほど変わっていた。
「行かないのか?」
その場に止まっている3人に声をかけた。
「あ、うん!行こう!」
「…」
そして施設の掃除が終わる頃、俺たちは再び集まってそれぞれの部屋に戻る。一日の日程の終わり、夕食を食べる前に俺は部屋で休んでいた。もちろん、俺と同じ部屋を使うのは朝陽だった。
「…先にシャワーを浴びたら?」
「いや…俺はいい。」
そう言ってからベッドに座って先生にもらったプリントを見ていた。でも発表で何を話すのかを考えることじゃなくて、今日あったことを思い出しながらぼーっとしてそれを見ていた。すると、隣のベッドに座る朝陽が俺に話をかけてきた。
「あのさ、蓮。」
「なんだ。朝陽。」
「俺から言ってもいいのかと思ったけど、やはり聞いてみたい。」
「何を…?」
プリントを下ろして朝陽の顔を見た。少しは深刻な顔で自分の手をいじる朝陽だったけど、今日はみんなの雰囲気がちょっと違う気がして先に言い出すのはできなかった。なんだろう…先も今も…
「これくらいアピールしたら、お前も気づくと思ってた。なのに…」
「あのさ、朝陽。俺はもしかして3人になんか悪いことをした?」
「え?」
「変だよ…俺にも分かるから何かあったら言ってくれよ。」
「…」
ここまで鈍感な人がいるのかと思う朝陽、慌てて言葉が出てこなかった。
「あ、いや。蓮、一つだけ聞いておこう。誰かお前に好きって言ったら、万が一だぞ。女子にそう言われたらどうする?」
「何、変なことを言ってる。もしそんな時が来たら断るしかねぇだろう…いや、そもそも俺を好きって言う時点から変じゃない…?聞きたいのはそれだったのか…」
「…」
朝陽は先のことを思い出した。結菜とくっついていたあの瞬間を思い出しながら蓮のことを見つめていた。どう考えてもこの話は筋が通らなかったから再び、蓮に話をかけた。
「でも、白川とくっついていたんだろう…?」
「あ、それはそうなんだけど…」
それに気にしていたのか…
『〇〇は…でしょう…?良い子でしょう…?』
ふっと頭に思い浮かぶ一言。
いけない、いつの間にかあの時を思い出してしまった。「好き」と「女子」このキーワードに反応してるのか、クソが…頭を壊したいほど嫌な気分だ。白川が言ったことをはっきり断った方がよかったのに、俺のミスだった…
「蓮!」
嫌な気持ちに惑わされた俺はいつの間にか拳を握って心を静めていた。
「蓮?おい、蓮!」
「あっ!ごめん…ちょっとぼーっとしてた。」
「それで?そうなんだけど…?の後は?」
「俺と白川はそんな関係じゃないから…誤解しないでほしい。」
「でも、先のは普通の友達でできることじゃねぇだろう…?」
今日の朝陽、なんかしつこいな…
いつもと違って、真面目な顔をする理由は一体なんだ。俺には分からない、今田の話も朝陽の話も…そして白川の本意も…知らないことだらけで頭に負担がかかる。
「気にしなくてもいいよ…お前は一人しかいない友達なんだから、気遣われてるのは嬉しい…けどもういいからほっておいてくれない?」
うじうじして、さっぱりしない蓮に飽きた朝陽がついその話を口に出してしまった。
「…お前を好きって言う人がいるんだよ!その子がすぐそばにいるんだよ!蓮!どうして気づいてくれねぇんだ!」
「…何、変なことを言ってんの…?」
「もうこれ以上は言わないから…お前が当ててみろ。」
「…」
「そろそろ時間だ。行こう…」
そう言った朝陽と夕食を食べるために廊下で女子たちを待っていた。
壁に寄りかかって朝陽が言ったことを考えてみると、ある意味ではコミュニケーションを磨く研修だった。でも、悪い…その子が誰なのか俺には興味がないんだ。
「あ、みんなー!行こう!待ってた!」
「うん!」
「…」
「わー!蓮くんだ。」
お前らが何を考えているのか、よく分からないけど…その通りにはならないと思う。なぜなら、俺にはもう好きな人がいるからだ。
「揃ったな、行こう。」
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