第47話 リーダーズ研修。

 土曜日の朝6時2分。

 今日は学級委員全員でリーダーズ研修をする日、でも目覚まし時計が鳴く前にスマホが俺を起こした。先からしつこく鳴いている着信音に目が覚めて、誰だと思ったらスマホの画面には白川の名前がいっぱい映し出していた。


 確かに学級委員を決めた時、連絡先の交換してたよな…


 不在着信

『白川結菜 (9)』


 もしかして、朝からずっと電話したのは白川のだったか…?なんで…?


「なんか…怖い。」


 でも、一応かけ直さないと…そして朝6時から白川に電話をかける俺がいた。今日は8時半まで学校に集合だから、朝ご飯は適当にスープとパンを食べることにした。まずはワイアレスイヤホンをつけて、朝ご飯を用意する。そしてゆっくりお茶を淹れる時、白川が電話に出た。


「はいーもしもし、蓮くん?」

「あ、白川か…電話したよな。先まで寝てた。」

「ううん…!大丈夫。」

「それで、どうした?そんなに電話をかけて。」

「今日は一緒に行こうかなーと思ってね。」

「何かと思ったらそれだけ…?」

「一緒に歩きながらいろいろ話したいこともあるから。」


 話したいことってなんだろう、それが気になる。白川は俺のことを知ってるように言ってたから、昨日も寝る時にちょっと考えてみたけど見覚えすらなかった。もしかして、これが陽キャの友達作り方…?んなわけないよな。


「あのさ、一緒に行っても…うち学校から遠くないからそれは無理だと思う。」

「そう?残念ー」

「電話じゃダメか…?10分くらいならいいけど?」

「ううん…後で話すからちゃんと学校に来てよ。」

「あ、そう?分かった。」


 サクラ

『朝から誰と電話するの…?』


 電話が終わってからすぐ届く先生のL○NEにびっくりしてすぐ返事をした。


 返信

『クラスメイトが電話して…かけ直しました。』

 サクラ

『女でしょう?』


 ウッソ、エスパーか…なんで分かる?このスマホ、盗聴されてんのか?


 サクラ

『返事!』


「あ、そうだ。返事…」


 返信

『はい…でも、誤解しないでください!そんなことじゃないです…』

 サクラ

『バカ、早く出てよ。』


 嵐の後、服を着替えるために鏡の前に立つ。


「てか、制服いらないよな…?確かに私服って言われたから。」


 リーダーズ研修は先生も一緒に行くからなるべくカッコいい姿を見せないといけないんだ。待って、デーどでもあるまいし。なんで服なんかに気にしてんの…間違えたこれは研修だろう。先生と一緒に行くだけを考えたから、本当の目的を忘れていた。


 適当にカジュアルな服装で行こう…


「よっし!これでいい!」


 すると、外から待っていた先生がベルを押した。


「遅ーい!」

「え…すみません。」

「朝から他の女と電話するからだよ…!」

「え?これは!もしかして、嫉妬?」

「んなわけないでしょう!」


 と、先生に腹を叩かれた。


「冗談です。」


 白いTシャツにジーパンか、でも俺は服より先生の髪型が好きだよな。先生は顔がすごく可愛いからポニーテールが似合う。それを見る度に、抱きしめたくなる気持ちが湧き上がるんだ。


 横顔から見られるその可愛さに眩しすぎて目が潰れてしまう。


「やはり、先生のポニーテール可愛い…」


 思わず、それを口に出してしまった。


「えっ…?朝から変なこと言わないでよ。」

「あ、行きましょう。先生!」


 ———学校の校門前。


 出発40分前の校門、リーダーズ研修会に行く学級委員が一人ずつ揃っていた。先に着いた蓮とさくらが隣のベンチに座っている時、こっちを見て手を振る朝陽と香奈、そしてその後ろに次いでくる結菜とみゆきも手を振ってあいさつをした。


 すると、その中から蓮を見つけた結菜が走り出して蓮に声をかけた。


「あー!蓮くんだ!」

「うん?あ、おはよう、白川。」


 てか、さりげなく下の名前で呼ぶのか…一体どうするつもりだ。


「みんな揃ったのか…な…?」


 いけない、後ろから先生の怒りが感じられる。そして振り向いたところには優しい笑顔をしてこっちを向いている先生の鋭い目が見られた。説明する状況でもないし、そもそも白川のやつはなんで親し気に声をかけるんだ。


「蓮くん!蓮くん!バスに乗って蓮くんのそばに座ってもいい?いい?」

「え…?」

「山岸くんと今田ちゃんはカップルだから!私と一緒に座ってもいいでしょう?」

「まぁ…そうしよう…」

「やったー!」


 まずいな、この話を聞いた先生の顔がますます暗くなっているのが感じられる…でも同じクラスだから、他に知り合いもない俺にはこれ以上の選択肢なんかないんです。


 理解してください…


「あ、せ…」


 なんとか言わないと…うじうじして先生に声をかけようとした時、「フン」と俺から目を逸らして人数チェックを始めた。


「…」


 そして結菜の振る舞いが気に入らなかったみゆきがちょっと離れたところで2年4組の方を見つめる。人数チェックのせいで近づかないまま、みゆきは持っているカバンの紐をしっかり握って我慢していた。

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