第45話 学級委員。
季節はもう夏、高2の夏が始まっていた。夏って言ったら色んなイベントがあるから盛り上がる季節だと思っていたけど、それは漫画の話だろう。いつもと同じ景色の教室とクラスメイトたち、人生に一度しかいない高校生活なのに楽しそうなイベントは起こらなかった。
まぁ…これが普通だろう。
「あー!海に行きたいー!」
「何…?いきなり、海?」
「夏!海!水着!そしておっぱい!」
「…あ、そう?」
朝から元気だな…朝陽、よくも今田の前でそんなことを言い出すんだ。
「今…何を言ったのー!朝陽!」
「へっ!」
朝から二人とも元気だな…
俺を見て助けを求めても…それはお前が変なことを言い出したからだろう。大人しく反省しろ馬鹿…
「担任だ!」
「みんな、おはようございますー」
今日の1限は先生だった。いつ見ても先生のスーツ姿は綺麗だな、甘えてくる時とは違って大人のオーラがする。そんな先生の姿に気を取られた俺はほおづえをついて、黒板の方をぼーっとして見つめていた。
「今日は授業より先にやっておくことがあります。」
そう言った先生は黒板に何かを書いていた。
『学級委員』
『イベント委員』
「はい!今日はクラスの委員長1人とイベント委員3人を決めましょう!」
あ、そうか。うちのクラスはまだ決めていなかったのか、委員長。学級委員なんてめんどくさいから…誰か立候補するのを待つ。それで始める委員長立候補、どうでもいいと思った俺は机に伏せてクラスの中を見つめていた。
でも、意外とうちのクラスは立候補をしようとしなかった。普通は委員長になりたい人はいるんじゃないのか、「やりますやります」って積極的に言う人が一人くらいはいると思っていたのに、なぜかうちのクラスには静寂しか流れていなかった。
「何…誰も立候補しない雰囲気…?」
「…」
下を向いて、黙々と他の人が立候補するのを待っているクラスメイトたち。
「誰もいない…?早く決めないと休み時間なしー!」
「えー?」
さくらが言い出したあの言葉に困る生徒たちが「えー」と嘆く、このままでは休み時間すら消えてしまう状況だった。そしてみんなの休み時間を守るために、一人の勇者が席から立ち上がる。
———その名は「山岸朝陽」。
「お?山岸くん、立候補?」
そうだ。お前が俺たちの救世主だ!
行け、朝陽!俺が全力でサポートする!やれ!お前しかいないんだ。頑張れー!
「私は秋泉蓮を委員長に推薦します!」
「うん?」
「他に立候補する人はない?なかったら秋泉くんにするから。」
「うん?ちょっ…!」
ちょっとこの状況が理解できなくて席から立ち上がる。手を上げて、黒板に俺の名前を書いている先生に話した。面倒なことは嫌なのに、なんで俺みたいな人が委員長になるんだ…早く阻止しないと本当に委員長になってしまう。
「先生!私の意見は…?」
「意見…?」
「…立候補したくないんです。」
「もう決められたから、やるしかないよ。」
「…」
にやついている先生には俺の話が通じなかった。隣に座っている朝陽もすごく満足した顔でコクリコクリと先生の話に頷く、俺はこの一瞬だけ…信じていた人たちに裏切られた気がした。
「委員長は決められたから、秋泉くんが出てイベント委員を決めてー」
「…はい。」
教卓に立って教室の中を見た。やはりみんなから学級委員になりたくないってオーラが感じられる、俺にはどうしようもない状況だった。それでも決められないと、休み時間がなくなるから一応やりたい人を探さないと…
「えーと、私と一緒に楽しいクラスを作るイベント委員はいませんか?」
静まり返る教室、やはり誰もいないんだ。このままじゃ…
「はい!」
その時、廊下の側に座っている女子が手を上げた。
「私、やります!」
「えーと、お名前…は?」
「
一目で分かる、あの子は明るい人ってことを…ちょっと暗い俺より明るいあの子が委員長に似合うけど、仕方ないのか…
てか、あの朝陽のやつはなんで俺を見てにやつく…?
そして黒板に彼女の名前を書いた。
『学級委員』
秋泉蓮
『イベント委員』
白川結菜
「他にいませんか?」
「はいー!俺やる!」
朝陽が…?
「私もやるー」
そう言った朝陽とともに後ろにいる今田も手を上げた。確かに二人はカップルだから一人がやると決めたらそっちもやるしかない状況だよな。助かったって言えばいいのか…なんか委員長はやりたくないから俺をそっちに投げ出した気がする。
「はい。」
『学級委員』
秋泉蓮
『イベント委員』
白川結菜
山岸朝陽
今田香奈
こうやって大体のことは決めたけど、これで本当にいいのか…?
そして俺たち4人は2年4組の学級委員になってしまった。めんどくさいけど、一度しかない高2だから頑張ってみる方がいいかもな…でもなぜか隣に立っているイベント委員たちは楽しそうな顔をしていた。
「朝陽、楽しそうだな…」
「そう?ワクワクするぞー」
笑っている白川と今田、これもいい思い出になるかもな…
どうせ先生もキャンセルさせる理由はないから、俺たちは「よろしくお願いします。」と言葉を残してみんなの休み時間を守ってあげた。
「うん!これで決まったよね。それと秋泉くんは休み時間になったら職員室に来て。」
「はい。」
「じゃあ、これで!みんな休んでー」
やるしかないんだ。行こう。
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